北朝鮮有事で日本が「難民問題」に直面する日 「難民の人権」と「治安」のバランスが問題だ
北朝鮮情勢をめぐり、緊迫した状態が続いている。もし、米国と北朝鮮との間で有事となった場合、北朝鮮から数万~10万人レベルの「難民」が、日本に押し寄せることは十分に現実味のあることだ。その場合、日本政府はどうするか。「国内の安全保障・治安」と「難民の人権保障」のどちらを重視するかの度合いに応じて、大きく3つの選択肢が考えられる。
なお、本稿で単に「難民」と表現する場合には、一般的に言うところの戦火を逃れて渡航してくる人々、といった意味合いである。人種や政治的意見などにより、本国政府から迫害を受けるおそれがあるために逃げてきた人々を指す、法的に厳密な表現としての「難民条約上の難民」とは異なる意味で用いているので、留意してほしい。
まず最初の選択肢として、「国内の安全保障・治安」を最重視するケースを考えてみよう。その場合、不法入国者として、直ちに身柄拘束して強制収容し、その是非を判断するための裁判も行われない。北朝鮮の人々は、有効な旅券を持っていない。したがって、日本政府が特別な許可を与えないかぎりは、入管法上の不法入国者にあたるから、強制収容が可能である。
「難民」の強制収容は、適法でも国際的リスクがある
強制収容すること自体は、その是非は別として適法だ。しかし、個々の北朝鮮難民自身には、責められるべき点がない。したがって、強制収容することは、人道的見地において国際社会から強く批判される可能性がある。
2つ目に「安全保障・治安」と「難民の人権保障」の双方について、バランス感を重視するケースを考えてみよう。その場合、上陸の許可・不許可の判断前の手続段階で、暫定的に「事実上の上陸」だけを許可することになるだろう。これを仮上陸の許可という。仮上陸の許可は、有効な旅券がなくても可能である。
仮上陸の許可は、その条件として、住居や行動範囲を指定し、手続のために出頭すべき日時も指定するものの、原則としては身柄拘束しない。ただし、仮上陸の条件に違反した場合のほか、日本政府が逃亡のおそれがあると判断した場合には、強制収容することができる。何らかの具体的な条件違反がなくても、逃亡するおそれがあるかぎり、直ちにこの措置を取ることができるのがポイントである。
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