北朝鮮危機で露呈する日本の「決定的弱点」 低すぎる国民と政府の危機管理意識

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今の日本でミサイルや毒ガス攻撃が起きたらどうなるのか(撮影:梅谷秀司)

北朝鮮による度重なるミサイル発射で、日本人の危機管理も目覚めてきたようだ。金日成生誕記念日の4月15日だけで、内閣官房の「国民保護ポータルサイト」へのアクセス数が、過去の月間最高を超える約46万件に上ったという。

こうした中、4月21日付の朝日新聞によると、内閣官房は同日、北朝鮮のミサイル飛来に備えて都道府県の担当者向け説明会を開き、避難等に関し住民への周知と訓練を呼びかけた。しかし、都道府県側の具体的な質問に対しては、歯切れが悪かったようだ。ミサイルが来るような状態で被災地救援に自衛隊が力を割けるのか、という突っ込んだ問いに対し、「研究課題としたい」と内閣官房幹部は答えたという。

また、14日付の同紙によると、安倍晋三首相はこれに先駆け、国会でミサイルにサリンが搭載される可能性に言及している。もし、サリンが使われれば、悲惨な被害が出ることはシリアの状況を見ても理解できる。日本では過去に、オウム真理教による地下鉄サリン事件を経験しているが、『日本はテロを阻止できるか?』(近代消防社)を執筆した私から見ると、いまだサリン対策も十分ではない。そこで今回は、サリンを題材に、日本の危機管理意識の低さと問題点を再考し、改善案を示したいと思う。

地下鉄サリンと同規模の攻撃にも対処できない

同著では「東京で再びサリン事件が起こったら、どうするか?」について書いているが、東京のようなかなりの大都市の消防本部でも、オウム真理教事件と類似した規模の事案に対処する準備もほぼできていない。

どういうことかというと、機材も不十分なうえ、制度も未成熟なのである。

たとえば、消防は基本的に市区町村に属する。市区町村が自衛隊に救援を要請するには、都道府県を通すのが建前である。まずそこでタイムラグが発生する。市区町村から都道府県に要請があったとしても、都道府県側がこれに対応・支援する訓練などを受けているとは考えられない。震災訓練などは行っているが、サリン攻撃に応用できるとは考えがたい。こうした状態では、オウム真理教の数十倍の規模のサリン攻撃をミサイルなどで仕掛けられた場合、目も当てられない事態になる可能性が高い。

また、こうした訓練の計画などは内閣官房の役割であるが、内閣官房の人員は十分とはいえない。確かに月1回以上の頻度で危機管理訓練をしているものの、それは震災対策や尖閣諸島など領土紛争も含み、サリン対策等は各都道府県に対して数年に1度程度しか行っていない。訓練の経験者は次の訓練までに日本式人事で別部署に異動し、経験の蓄積なども期待できないのが現状だ。

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