核や化学兵器より「生物兵器」が恐ろしいワケ 21世紀の「超兵器」になる可能性も

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ISがエボラウイルスを意図的に拡散させる可能性を懸念する向きもあった(写真:AP/アフロ)

シリアの化学兵器や北朝鮮の核武装の脅威によって、生物兵器の危険性が国際社会では語られなくなっている。しかし、進化する科学技術や遺伝子工学は、新たに危険な扉を開くかもしれない。

9.11直後、5人の命を奪った「炭疽菌郵便」事件のほかに、深刻な生物兵器を使った攻撃は近年ほとんど行われていない。多くの大国は1970年代に生物兵器の研究を減らしているが、その理由の1つとして、壊れやすい細菌やウイルスを、爆弾やミサイルを投下したときや散布した後に「生かし続ける」ことの難しさがある。

ビル・ゲイツも生物兵器の危険性を警告

アルカイダやイスラム国(IS)などの過激派組織は、科学技術の対極を大きく受け入れ、ニースやベルリンなどで車やトラックを使って歩行者を攻撃したような、シンプルだが残忍な方法を行っている。

多くの科学技術と安全保障の専門家は、生物兵器によるリスクは比較的低いことで一致している。しかしそれは、自宅でも使うことができるような小型で安価な、基礎遺伝子工学技術の普及によって変化するかもしれない(元NASAのバイオエンジニアが開発した遺伝子編集キットが昨年市販された)。今では、悪意のある人物が、バクテリアやウイルスのDNAを変更し、より致死的で治療の困難な脅威を発生させることができるのである。

生物学的研究と遺伝子研究に対する規制は国によって大きく異なるが、このような技術を用いた兵器の製造は、1975年の生物兵器禁止条約の下では大部分が違法である。しかし、近年の進歩により、より効果的かつ致命的な新しい病原体の設計が容易になるかもしれないと、一部の専門家は懸念している。2月にも、マイクロソフトの創設者であるビル・ゲイツ氏は、こうした兵器が関与する紛争が、核戦争よりも多くの人々を殺す可能性があると警告している。

2003年に科学者が初めて単一ヒトゲノムの配列を解読したことによって、生物学的に符号化するそれぞれの小さな断片が、何を意味するのか理解できるようになったが、これは大規模で費用のかかる作業であった。

しかし今では、人間、動物、植物、病原体個々のDNAの差異を分析するような分野の技術コストは、毎年大きく低下している。基礎遺伝子工学技術の利用可能性が高まるにつれて、おそらく個々のDNAや、民族全体のDNAを標的にした、より洗練された新しい兵器を開発することがより容易になる、という見解を示す科学者も出てきている。

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