北朝鮮危機で露呈する日本の「決定的弱点」 低すぎる国民と政府の危機管理意識

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サリン解毒剤についても同様だ。今は比較的簡単に使える自動注射器もある。その使用だけではなく、購入も今は、医師以外は違法である。専門家尊重の意識かもしれないが、何回かの講習を受ければ医師でなくても購入・使用できるようにしてはどうだろうか。緊急救命士などに注射の権限を与えることは急務である。

そのような救命隊や自衛隊、都道府県や市区町村の活動を調整するのは、特に有事では内閣官房の役割である。だが、前述のように人員が十分ではない。

内閣府との連携が必要だ

そこで私は前掲著作の中でも内閣府の活用を提言した。特に内閣府防災担当は、東日本大震災を契機に米国の緊急事態管理庁(FEMA)と協力協定を結んでいる。今は自然災害関係の情報をFEMAから得ているだけかもしれないが、ミサイルや毒ガスによる攻撃に対処する方法に関しても、FEMAは多くの情報を持っていると思われる。そもそも冷戦時代に核戦争対処機関だった経緯があり、9.11以降はテロ対策にも力を入れている。

そのFEMAの持つミサイルや毒ガスによる攻撃に対処するための知見や情報も内閣府防災担当はできるだけ早く入手するべきだろう。内閣府がほかの省庁が持っていない外国の重要な情報や知見を持っていれば、今まで不十分だった内閣府の他省庁への調整力も高まる。

最近は、似た業務を行う内閣府と内閣官房のポストを、同一人物が兼務するケースもある。優秀な人材が多い内閣官房との「一体化」も、平時における内閣府の調整力を高める。これまで挙げてきた諸問題が平時から少しでも解決されていれば、有事での内閣官房の調整力も高まるに違いない。

また、すでにある有事に一時的にほかの省庁から専門スタッフを派遣してもらう制度も、311では上手く機能したので、サリンやミサイル攻撃対処専門家も、予定者リストに拡充すべきだ。

ミサイルや毒ガスの攻撃に対する日本の準備はあまりにも不足しているが、改善の基盤がないわけではない。あとは国民の意識改革だろう。危機は必ず起こると考え、それに備える。助かる必要のある人が、優先的に助かるようにする。そのような国民の意識改革が起これば、この北朝鮮危機も乗り切れるかもしれない。時間が間に合えばだが……。

吉川 圭一 グローバル・イッシューズ総合研究所代表

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よしかわ けいいち / Keiichi Yoshikawa

筑波大学大学院修了。国会議員公設秘書、政策提言団体スタッフを経て独立。グローバル・イッシューズ総合研究所代表取締役。2009年より2016年まで米国ワシントンDCにも拠点を持つ。2011年、一般社団法人日本安全保障・危機管理学会のワシントン事務所長兼任。2017年より同学会防災・テロ対策研究会部会長。

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