倒産件数8年連続減少に潜む「不都合な真実」 サービス業には倒産が増えている業種も

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今年3月に破産手続き開始決定を受けたエヌ・ビー・ラボはその典型例だろう。同社は高齢者向けに小規模・低価格の賃貸住宅を運営するほか、介護事業に関するコンサルティングを手掛けていた。一時は運営施設数が約60に達し、年商も38億円まで拡大した。だが、近年は現場スタッフの確保が難航し、採用活動費や人件費が増加して資金繰りが悪化。一部の取引先に対し、支払い遅延も起こしていた。

こうした中で、2016年に埼玉県内の運営施設で虚偽の申請による介護報酬の不正請求が発覚。県から指定取り消し処分を受け、信用力がさらに低下した。最終的には、税金や家賃の滞納も散発し、破産申請に至った。

このような状況は介護業界に限ったことではない。飲食や不動産など、内需型の産業を中心に倒産は増加傾向にある。「かねて競合が激しいうえ、最近では人手不足が深刻化している。原材料や燃料の価格も上がっており、コスト高を吸収できずに破綻する企業が増えつつある」(松永部長)。

新陳代謝なく、ゾンビ企業が増えるばかり

全体の倒産件数はバブル期並みまで水準が低下したが、こちらについてももろ手を挙げて喜べるものではなさそうだ。足元の倒産件数の少なさは、冒頭でも触れたとおり、政府主導の"延命措置"によるものであり、デフレ環境下では売り上げの拡大によって返済原資を調達できる企業は決して多くない。「市場から退場すべき企業が生かされているので、経済活性化の足かせになり、労働生産性の向上を阻む一因となっている」(松永部長)。

企業の新陳代謝が健全に行われなければ、日本経済全体の成長率も低下が続くうえ、景気の落ち込みや金利上昇など何らかのきっかけにより、延命措置で先送りされてきたゾンビ企業の破綻が大量に起きかねない。

猪澤 顕明 東洋経済 記者

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いざわ たかあき / Takaaki Izawa

1979年生まれ。慶應義塾大学卒業後、民放テレビ局の記者を経て、2006年に東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、ニュース編集部などに在籍。2017年に国内のFinTechベンチャーへ移り、経済系Webメディアの編集長として月間PVを就任1年で当初の7倍超に伸ばす。2020年に東洋経済へ復帰、「会社四季報オンライン」編集長に就任。2024年から「東洋経済オンライン」の有料会員ページを担当。

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