暴走北朝鮮を封じるには経済分析が不可欠だ 為替も物価も「二重構造」の歪んだ経済実態
実際に、この程度であれば北朝鮮の国定価格や公式レートはその機能を喪失したとも言える。とはいえ、外貨が不足している北朝鮮は、これら二重構造を黙認している。筆者はこの現象について、以前は「市場経済と計画経済の衝突」と考えていたが、現在は「市場経済と計画経済の妥協」だとみている。それは、金正恩政権が成立して以降、市場を奨励する雰囲気がはっきりとしているためだ。
その理由は、どのような形態であれ、外貨が北朝鮮内部にいったん入ってしまえば、外には出て行かないということ、そして市場で流通している外貨を中央へ引き上げることができると当局が判断しているためだ。これまで経済政策としての貨幣交換が数回行われたにもかかわらず、市場で流通される外貨を中央へ引き上げることができなかったが、今では決心さえすれば外貨流通をいつでも統制できるという国家統制における自信があるようだ。
最近、平壌市内では黎明(リョミョン)通りの建設をはじめ多くの大型建設や再開発がなされているが、これには市場の富裕層(トンジュ=朝鮮語の直訳でカネの主という意味)が不動産投資など新たな利権を期待して投資をしており、実際に彼らが国家に献納するぶんを外貨で行うケースが増えているという。
また公式の為替交換所では「なぜ外貨を持っているのか」と聞くことなく、黙って市場レートによる交換に応じている。とはいえ、市場は当局が意図したように必ずしも動くものではなく、市場の力が今よりもさらに拡大すれば、管理・統制が不可能になるレベルに達するだろう。
北朝鮮の為替や外貨取引市場の変動など、市場経済が北朝鮮社会に与える影響とそれによる変化には今後も注目する必要がある。
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