1980~90年代に、日本の富裕層から始まって、どんどん海外のリゾートに行く機会も増えてきた。東南アジアが中心ですが、そういうリゾートのくつろぎ感とか、時間の使い方とか、気楽さ、ゴージャスさを、日本人は知ってしまった。そうすると日本の旅館には行きたくなくなるのです。
――旅館が時代に取り残されてしまっているのですね。
温泉旅館の温泉はよくても、座敷に座椅子で座って、足をこういうふうに曲げないといけませんよね。なおかつ、朝ご飯を何時にしましょう、夕飯は何時にしましょう、お布団はいつ敷きましょう、といった意味での時間が、旅館ではどちらかというと規制されますよね。われわれはそこを、変えるべきではないかと思ったのです。
調査すると、今は旅館よりホテルのほうが好きだと言う日本人が多い。それはやはり、日本の旅館が努力を何もしてこなかったということではないかと。自分たちのよさを生かしつつも、進化させた宿泊施設を作ってこなかったことが理由なのではないかと考えて、星のやはそうした部分を全部排除しています。
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日本的な情緒を残す工夫と、その進化
――階段が多くてバリアフリーではなかったり、賛否両論ありそうな部分もありますね。
階段が多いのは、なぜかというと地形によるのです。だから竹富島は少ないです。軽井沢と京都は谷にあって、どうしてもこう斜面に作るので、そこが階段になってしまう。わざわざ作っているわけではなく、必要以上に作る意図はないですよ。
――ああ、そうですか。それからキッズルームなどでも感じましたが、明るすぎない。ひょっとするとやや暗いかなという気もしましたね。
それは、日本的な情緒を残すためです。谷崎潤一郎の小説にもありますが、ほのかな明かりの中で美しさを感じるという日本人特有の美意識を、やはり私たちは大切にしたほうがいいのではないか。ダウンライトを極力減らして、しかもその照度を落としているのです。
まあ、ご高齢の方にはちょっとご不便をおかけするので、そこはもうプラスの照明で対応しています。それでも蛍光灯の明るさとはまったく違う照明にしています。
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