丸井グループが小売2強に接近
小売業のトップはセブン&アイ・ホールディングス(549.0点)。人材活用90.7点、環境93.2点、企業統治+社会性96.4点、財務268.7点。セブンと並んで業界の雄であるイオンは542.4点で2位。人材活用96.5点、環境94.6点、企業統治+社会性95.9点、財務255.4点。人材活用、環境はイオンが上だが、財務はセブンが大きく上回った。
3位丸井グループ(536.2点)は急上昇。人材活用96.5点、環境95.9点、企業統治+社会性94.1点、財務249.7点と財務以外は上位2社と遜色ないレベルまでアップした。総合でも66位と存在感は急激に増している。
以下、4位三越伊勢丹ホールディングス(515.5点)、5位J.フロント リテイリング(500.2点)、6位ローソン(497.7点)と百貨店勢が目立つ。
不動産業トップは三菱地所(512.7点)。人材活用69.8点、環境89.2点、企業統治+社会性89.3点、財務264.4点と人材活用が若干弱い。業種的に問題となりやすい政治や行政との癒着防止などコンプライアンス面には特に力を入れる。丸の内の新ビルへ太陽光発電を取り入れるなど再生可能エネルギー導入にも積極的だ。
2位は昨年1位の三井不動産(509.9点)。以下、3位イオンモール(504.9点)、4位ヒューリック(486.7点)、5位野村不動産ホールディングス(485.4点)と続く。
トップの三菱地所でも総合は122位と高くない。特に人材活用の得点が全体的に低い。障害者雇用率、有休取得率、管理職への女性登用などで遅れが目立ち、依然業界全体の課題といえる。
サービス業はセコム(537.0点)がトップ。人材活用81.4点、環境86.5点、企業統治+社会性88.2点と、いずれもトップクラスではないもののバランスよく得点している。「お取引先CSR推進ガイドライン」を作成し、主要サプライヤーに取り組み推進を要請。イギリスでは手軽な防犯対策等についてのコミュニケーション活動を継続的に実施している。
2位は電通(525.4点)。新入社員の過労自死事件をめぐって、多くの批判を受けているが、『CSR企業総覧』の掲載情報(アンケート締め切りは2016年8月)によると「環境保全」「コミュニティ」など4つの重点領域を中心に取り組みは幅広く行われている。ただし、われわれもCSRの基本と考える「人を大切にする」という点で大きな問題を抱えていた。
とはいえ、女性管理職比率7.7%、新卒3年後定着率90.4%(2013年→2016年)、30歳平均賃金36.5万円(最高45.9万円)など開示された数値情報すべてが悪いわけではない。一方、有休取得率は2013年度51.5%、2014年度54.0%、2015年度40.5%と悪化。育休取得者も2015年度は昨年比25%減の45人。これらの数値の変化は現場の疲弊の証しと見ることができるのかもしれない。また、開示された月平均残業時間は26.1時間(法定外)。これが適切な開示なのかどうかは今後検証していく必要はあるだろう。
同社のように問題を起こした企業は多くのCSR関連のインデックスなどでは除外という形になることが多いが、一部を除きいきなり解散するわけではない。電通も事業活動は継続しているし、依然上場企業でもある。
切り捨てるのではなく、社内体制や開示情報のどこに問題があり、今後、どのように変わっていくかを継続して見ていくほうが大切と考える。東洋経済CSR調査で集めた情報はすべて『CSR企業総覧』に掲載し、そのデータを使い評価を作成している。これを長年地道に行うことで全上場企業が正しい開示を行う方向につながると信じている。社会的に大きな批判を受けている同社が「今後、どのように変わっていくか」。アンケートをはじめとする開示情報に注目していきたい。
以下、3位楽天(507.1点)、4位オリエンタルランド(493.3点)、5位リクルートホールディングス(492.5点)と続く。
CSR活動は業種によって得意・不得意な分野は異なる。そのため、全体のランキングと併せて業種別の順位を確認することは欠かせない。そのうえで強み弱みを確認すれば企業がより詳しくわかる。参考にしていただきたい。
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