木本: SMAPとつけた「かつお節」をジャニーズ事務所に無断で売ることができないわけですね。指定されている商品とは全然似ていない商品、たとえば「消しゴム」にSMAPなら大丈夫ですか?
稲穂:商標権侵害とはなりませんが、「SMAP」が周知・著名な商品等表示に該当すると判断できる場合は、不正競争行為として差し止めや損害賠償の対象となる可能性があります。
木本:見方が1つの方向からだけではないので、難しいですね。最近だと、任天堂のマリオカートの話が話題になりました。
稲穂:品川のレンタルカート会社「マリカー」をめぐる騒動ですね。この騒動でも複数の知的財産権が登場しています。まず、「マリカー」という社名でマリオそっくりの衣装を貸し出し、客がそれを着た映像をウェブなどに載せていたことから、任天堂は「マリカー」社の行為が著作権侵害で不正競争行為であるとして訴えを起こしています。それに先立って、任天堂は「マリカー」社の登録商標「マリカー」について異議を申し立てましたが、認められませんでした。マリオカートはみんな知っていますが、マリカーはマリオカートの略称としては一般には広く知られていないことなどから登録が維持されたのです。
木本:皮肉な話ですよね。マリカーのほうは確実に知名度が上がって、任天堂の思いとは逆の方向に行ってしまった。
稲穂:任天堂としては、あのビジネスがどうというよりも「スーパーマリオ」というブランドを守りたかったのだと思います。事故が起こったりしてイメージが悪くなるのを心配したのかなと思いますね。
ジャニーズ事務所が肖像権に目覚めた原点は?
木本:他にはジャニーズ事務所の知財戦略で特徴的なものはありますか。
稲穂:最もよく知られているのは、肖像に関するパブリシティ権についてのものですね。たとえば雑誌の表紙にジャニーズのタレントが載る場合、ネット上のサムネイルでは影絵になっています。なぜなら事務所が「肖像を出さないように」と強く要請しているからです。日本テレビ系の「ニュースゼロ」のホームページでも、他のキャスターの皆さんは写真が出ているのに、櫻井翔さんだけ灰色のシルエットになっています。キャスターというアイドルとは違う立場で出演しているにもかかわらず、です。それくらい所属タレントの肖像の管理を厳しく行っています。
木本:世間も暗黙の了解で、違和感を持たなくなったら勝ちですね。
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