「席次を知っておく理由は、『非常識だ』と判断されることを避けるためだけではありません」と、『図解社会人の基本マナー大全』(講談社刊)の著者で、現代礼法研究所主宰の岩下宣子さんは言う。
「『どこに座れば……』と迷ったり、焦ったりしていると、それだけで頭がいっぱいになってしまい、本来すべき“他者への配慮”ができなくなります。それこそがビジネスにおいて大きなマイナスになり得るのです」(岩下さん)。
そこで今回は、いまのうちに覚えておきたい、「席次」の法則を紹介していきたい。
上座は「出入り口から遠い場所」がキホン
まずは、席次の基本からおさえておこう。大原則は、出入り口から最も近い席が「下座」で、最も遠い席が「上座」であることだ。出入り口から近いと、人がそこを出入りするたびにせわしなく、落ち着かない。反対に、出入り口から遠ければ、最もリラックスして座ることができるからだ。
たとえば、「応接室」。図に記載している数字は席次で、上座→下座の順になっている。つまりこの場合、上座は入り口から最も遠い2人がけ長いすの左側になる。逆に下座は、最も出入り口に近い、右側の一人がけひじ掛けいすだ。ようするに、とくに席を勧められることもなければ、若手社員は、迷わず④の席に座るのが正解といえるだろう。
しかし、客先に出向いたときに下座に座ろうとすると、相手から「どうぞこちらの席へ」と、上座を勧められることのほうが多い。そんなときは、遠慮せずに上座に座るのがマナーだ。会社に来てもらった側からすれば、「招いた立場として上座に座ってもらいたい」という配慮がある。さらに自分が上座に座らなければ、案内をした人が、「お客様に対する配慮が足りない」と叱責を受けるかもしれないからだ。逆にいえば、自分が来客者を招いた側であれば、迷わず奥の席、来客者に①の上座を勧めるようにする。
応接室については、もうひとつ、上座か下座かを見分けるヒントがある。それは、「長いす」か「一人がけひじ掛けいす」かで判断をすることだ。実は長いすは「上座の席」という位置づけになっている。ひじ掛けがついているほうが「何だかエラそうに見えるので上座かな」と思いがちだが、「足を伸ばしてリラックスできる席」ということから、長いすのほうが上座になっている。その中でも、ドアから遠いほうが上座となる。
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