NHK受信料、「ホテル1部屋1世帯」の不思議 受信料のあり方を根本から見直す必要がある
NHKが大手ホテルチェーン「東横イン」を相手取り、未払いとなっている受信料の支払いを求めた訴訟で、3月29日に東京地裁が下した判決が話題になっている。判決では東横インが運営する235のホテル全室に設置するテレビ約3万4000台分について、未払いとなっている受信料、19億3000万円の支払いを命じた。
支払い対象は、2014年に東横インがNHKと全部屋分の受信契約を結ぶまでの2012年1月~2014年1月まで25カ月の未払い分。「その期間は一定の割合の客室だけ契約すればよいという合意があった」と主張する東横イン側の主張が退けられ、差額分の支払いを命じられたわけである。
放送法はNHKによる恣意的な契約免除を認めていないため、今回の地裁判決は妥当といえそうだ。しかし、受信機を設置したすべての部屋について契約しなければならない、という点は後述するように疑問も残る。
個人の受信料支払い拒否者に対する請求も強化
NHKは2009年以降、宿泊施設等の事業所について、係争中の案件を含め19件の受信料請求訴訟を起こしている。一方、2006年以降、NHKは個人の受信料支払い拒否者に対する請求も強化している。年内には受信契約に選択権がないことについて東京都内の男性が起こした訴訟で、最高裁の判断が下る予定だ。インターネット配信など放送以外のコンテンツも増加する中で、受信料負担のあり方について本質的な議論が必要なタイミングといえるだろう。
まずは意外に知られていないNHK受信料に関する放送法についての話を簡単にしておきたい。NHK受信料は公共放送を運営するコストを、受益者で公平に負担することを目的に「義務化」されていると思っている人も多いのではないだろうか。
しかし、放送法第64条(協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない)で定められているのは、NHKの受信が可能な装置を設置したときに受信料契約をNHKと結びなさいということだけだ。
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