保険の年代・年収別モデルプランは現実的か 「経済合理性」と「不確実性」から保険を考える

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2つのキーワードを切り口にすると、保険の利用がふさわしいのは、現役世代が急死や長期の就業不能状態に備える場合だ、と結論づけられます。

このような見解には「入院リスクなどは加齢とともに高まるのだから、『終身医療保険』加入は必須」といった反論もあります。

遠い将来に備えるほど、契約内容の「不確実性」が増す

もう1度、保険の仕組みを考えてみてほしいと思います。「健康保険」や「公的介護保険」の保険料が値上げされる理由を想像してもいいでしょう。高齢者の入院保障などは、保険の仕組みになじまないのです。

入院リスクが高まる年齢で充実した保障を得るには、高額の保険料を負担する以外にないからです。「高まるリスクに備えたい」という願望を重視すると、保険の「経済合理性(手頃な料金で手厚い保障が持てる)」が損なわれてしまうのです。

「若いうちに終身型の保険に入っておくと、老後も安い保険料で充実した保障が持てる」という見解もありますが、「不確実性(保障内容が時代に合わなくなる)」が高まることを忘れてはいけないはずです。

近年、通院治療で対応できるがんの場合、入院と死亡保障中心の古い「がん保険」がさほど役に立っていないケースも散見されます。医療の変化などを予測するのは難しいため、遠い将来に備えるほど契約内容の「不確実性」が増すのです。

「経済合理性」と「不確実性」の2点から、加入者の年代と保険の利用価値の関係をまとめたのが次の表です。

相対的に、保険料負担が重くならず、将来においても契約の価値が劣化する危険性が低いのは、若年層から中高年までの人が、一生涯ではなく期間限定で保険を利用する場合だと考えられます。

あらためて、現役世代が、死亡や就業不能に備える保険を一定期間利用するのが望ましい、とわかるのではないでしょうか。

したがって、モデルプランを検討するのであれば、一定期間の死亡に備える「定期保険」や「(死亡保険金を分割で受け取る)収入保障保険」と「就業不能保険」を優先したらいいはずです。

設定する保障額は、職業等によって異なります。国や勤務先の制度によって得られる保障が大きい人ほど、保障額が低く設定できるでしょう。貯蓄その他、換金可能な資産が多い人の場合もそうです。

また、個人の考え方の違いもあります。大病になっても生活のレベルを落としたくない人は、介護やがん保険の重大性・緊急性を大きく見ることになるかもしれません。

ただし、相応の保険料負担が生じますから、「ほしいおカネ」と「必要なおカネ」について考えることが大切だと思います。

このように具体的に検討していくと、モデルが細分化するという皮肉な流れになります。現実問題としては、商品販売による報酬を得ていないファイナンシャルプランナーなどに相談するといいでしょう。その際、今回、提示したキーワードを意識してほしいと思います。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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