青木功・日本ゴルフツアー機構(JGTO)会長が、感激の面持ちでこう話した。「いろいろあったけど、万歳の一言で片づけたいぐらい、うれしいですよ。会員の皆さんにわかっていただけたことはうれしいことです」。3月21日、JGTO社員総会後の会見での言葉だった。
なぜ、「万歳」といいたいのか。それは前日20日に、埼玉県の霞ケ関カンツリー倶楽部(CC)が臨時理事会を開き、正会員を男性会員にしか認めていなかったこれまで会員規則(細則)を変更して、女性の正会員を認める決定をしたからだ。東京五輪のゴルフ競技の会場として、残されていた障害がなくなった。選手を五輪に送り出す側であり、日本の男子トーナメントを主管するJGTOのトップとして、青木会長が喜ぶのは当然のことだ。
「女性正会員がいない」ことをめぐる問題
2020年東京五輪の「ゴルフ競技会場問題」の大まかな経緯を説明しておこう。今年1月、東京大会組織委員会の森喜朗会長、東京都の小池百合子知事が相次いで、霞ケ関CCが「都心から離れている」「女性正会員がいない」などとして、開催会場とすることに疑問を呈したために、話が膨れ上がった。
その中で「女性正会員がいない」という問題が、男女平等をうたう五輪憲章に反するということで、国際オリンピック委員会(IOC)は東京五輪組織委に改善を要請。2月には五輪組織委、日本オリンピック委員会(JOC)、日本ゴルフ協会(JGA)、国際ゴルフ連盟(IGF)が連名で霞ケ関CCに対応を求めた。霞ケ関CCでは正会員への説明会や総会、理事会で何度も協議し、今回の規則変更となった。
3月16日には、IOCのバッハ会長が「IOCの立場は明快。男女に平等に機会を与えるコースだけが五輪会場になれる。規則変更が行われると自信を持っている」と述べたことが報じられた。女性正会員が認められない場合には、会場変更を行う可能性を示したことになる。直後に霞ケ関CCが、IOCが言うところの「改善」を行った形になった。
大会組織委の森会長は「会員の皆さまのご協力に感謝申し上げます」とし、小池都知事は「日本を代表するゴルフクラブの実績がダイバーシティー(多様性)の実現を促進させることを期待する。レガシー(遺産)になるものと確信する」とするコメントをメディアが報じた。ゴルフ界からはIGFも組織委などを通じて「この決定は喜ばしく、われわれは素晴らしいゴルフ競技が霞ケ関CCで開かれることを望んでいる」という談話を寄せ、IOCのコーツ調整委員長は「理事会の規則改正を歓迎する。これで霞ケ関CCでの素晴らしい五輪を期待できる」と談話を発表したとメディアは伝えている。
霞ケ関CCの決断で、東京五輪のゴルフ競技の会場問題はIOCなどの反応を見る限り決着した。だが、今回の会場問題で霞ケ関CCに批判が集まったのは今も腑に落ちない。霞ケ関CCは何度か回ったことがあり、日本オープンや日本ジュニアなどトーナメントの取材で行くぐらいで、そんなに縁もないが、霞ケ関CCは今回の問題でここまで批判される理由も必要もなかったと思うのは、筆者だけだろうか。
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