「女性正会員がいない」ということが、独り歩きして「女性がプレーできない」となり、女性差別している霞ケ関CCが悪い、そして、そんなコースで五輪は開催できない、という「風評」になってしまったのが問題を大きくしてしまったのだろう。「女性正会員がいない」ということを「女性がプレーできない」と、とらえた方も多かったのではないか。
JGAが1月に発表した、この問題に対する「見解」では、霞ケ関CCでは「女性会員は270人在籍して、年間営業日の約9割が女性のプレー可能な日であり、年間9000人を超える女性がプレーしている」(抜粋)としている。確かにすべての日にプレーできる正会員に女性はいないので、日曜日などプレーできない日はある。が、1日平均約30人の女性がプレーしているゴルフ場は日本でもそうそうないのではないか。女性会員は存在するし、女性は他のゴルフ場以上にプレーしている。
五輪関係者は「霞ケ関CC」会員規則を知っていたはず
2013年に東京五輪開催が決定した際に、立候補資料として女性正会員が認められていないということも含めて、霞ケ関CCのすべての情報について、JGA、JOC、IGF、そしてIOCは分かっていたはずだ。昨年10月に来日したIGFのドーツ会長は霞ケ関CCを視察して「素晴らしいコース」と絶賛している。その時に女性がプレーしている姿も見ていただろう。
ビジネス契約で、相手からお願いされて引き受けた仕事が、準備をしてしまった後に「あの時認めた条件を変えてくれないと、この仕事はほかにいくよ」と言われたら、その企業はどう思うだろうか。まして、一ゴルフ場が自由に決めていいはずの会員規則に対して、外部が改善を要請することが許されるのだろうか、とも思う。
たぶん、モヤモヤするのは、どの組織も霞ケ関CCに対して公に「申し訳ないが」という意味の言葉を発していないからだろうと思う。組織委にとっては前身の招致委が関係したことだし、東京都も前々知事の時代のことで、今の経済状況などもあるから、改善するところはしないといけない。
ただ、今回のことに関しては政治家がよく使う「遺憾」でもいいから、前置きしてから対応を求めるなりすれば、霞ケ関CCがこれほど批判されることもなかったのでは、と感じる。IOCやIGFには、ちゃんと資料を精査したのかどうかも明らかにした上で改善を要請してほしかった。開催地に決めた側なのだから。
ともあれ、これで五輪会場が決まれば、なにより選手にとっていいことなのは間違いない。筆者が気になっていたのが、今回の問題で「地の利」を生かせなくなるかもしれないということ。
野球にしろ、サッカーにしろ、ホームチームに有利なのはもちろん応援という要素が一番だが、球場やサッカー場にはそれぞれ「癖」があり、アウエー(ビジター)チームは慣れていないという要素もある。たとえば、外野フェンスのボールの跳ね返りだったり、芝の種類によるボールの弾み方だったり。
せっかくの地元開催。日本選手にとって、五輪開催時期と同じ時期に五輪会場で練習できるのは、アドバンテージになる。それも、あと3回(2017、2018,2019年)しかない。ゴルフ競技の強化委員長でもある倉本昌弘・日本プロゴルフ協会会長が「早く会場を決めて選手が練習できる環境にしてほしい」と話していたのは、地の利を生かすためでもあるだろう。
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