お2人とも場所は違えど、医工連携の風土の中でのびのびと研究し、医療を変えるイノベーションを生み出してきたという共通点がある。そして、“神の手”に頼らず、多くの患者を救う治療法を生み出そうとしていることも。
”プリウス”なら、いつでも、どこでも、誰にでも
片岡教授いわく、再生医療やバイオ医薬といった「フェラーリ」のような最先端医療に対し、高分子ミセルはエコカーの「プリウス」。治療効果も経済合理性も高い、「いつでも、どこでも、誰にでも」使える均質な医療だ。片岡教授はこれを「スマートヘルスケア」と呼び、普及に向けた取り組みを続けている。臨床試験の推進もそのひとつだ。
一方、純粋な探究者としての片岡教授が目指すもの――それは、がんなどの病気の治療にとどまらず、その先にも広がっている。
「もちろん薬でがんなどを治すのは重要です。だけどそれだけじゃなくて、高分子ミセルを体に入れることによって、体の中で起きている不思議な現象を見つけることができる。予期せぬ発見から、今までわからなかった生物の仕組みがわかっていく可能性がある。
僕が提案していて、将来こういう分野ができたらいいなと思っているのが『ナノ生理学』。生理学ってなんだか古臭い学問だと思うでしょ。それに対して分子生物学はかっこいいじゃない。でも、分子生物学では生物の中で何が起きているかわからない。最近、特殊な顕微鏡などを使って、生きた生物の体の中で何が起きているかを解析できるようになったので、再び生理学という学問が脚光を浴びる可能性もあります。
基礎研究を応用につなげるという考え方がありますが、科学の歴史はこの仮説が間違っていることが多いと示している。熱力学ができる前に蒸気機関車は走っているんですよ。生物学はみんなそう。医学でもそう。圧倒的に、応用研究から基礎が生まれることが多いのです」
自ら設計したナノスケールのトロイの木馬に乗って、片岡教授は生物の不思議に出会うための旅を続けている。
(撮影:大澤誠)
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