2012年9月、欧州は大混乱に陥っていた。19日に仏カーン大学のセラリーニ教授らの研究グループが、安全性が確認されているはずの遺伝子組み換えトウモロコシに発がん性があるという実験結果を発表したからだ。
セラリーニ教授が実験したのは遺伝子を操作し、除草剤に対する耐性を組み込んだ米モンサント社が開発したトウモロコシだ。数十匹のネズミに2年以上、遺伝子組み換えトウモロコシを与え続けた結果、普通のトウモロコシを与えた場合より、発がん性が高かったという。日本ではあまり大きく報じられなかったが、このニュースは遺伝子組み換え作物に批判的な欧州を瞬時に駆け巡った。
その後、セラリーニ教授の実験については、「実験方法が不十分」という批判が続出。EFSA(欧州食品安全機関)が安全性評価としては科学的な質が不十分であるとして、追加情報を求めている。日本の食品安全委員会もセラリーニ教授の試験方法には不十分な点があり、危険性があるという結論を導くには不十分だとしている。(なおセラリーニ教授の論文はこちら、日本の食品安全委員会の見解はこちらで見ることができる。)
ジャン=ポール監督は実験前からセラリーニ教授に密着取材。実験中に起きた東京電力の原子力発電所事故に衝撃を受け、「この2つの問題は共通している」と映画の撮影を始めた。この『世界が食べられなくなる日』はセラリーニ教授の実験結果が公表されて数週間後にフランスで上映を開始。日本では6月8日からアップリンク(東京都渋谷区)で公開されている。
実際に映画を見てみると、遺伝子組み換え作物と原発事故という大きな問題を論じているわりに、やや大雑把な印象だ。現在、遺伝子組み換え作物については、トウモロコシが家畜の餌、大豆は搾油が主な用途。植物油を除けば、われわれが直接に遺伝子組み換え作物を口にする機会はあまりない。また、遺伝子組み換えトウモロコシを摂取したネズミで発がん性を確認できるなら、大量の遺伝子組み換えトウモロコシを食べている家畜はどうなっているのか。ジャン=ポール監督も記者の質問に対し、明確な答えを示していない。原発事故に関しても、むしろ監督の問題意識と日本側の意識の差が、浮き彫りになった感がある。
映画を撮ったジャン=ポール監督の意図はどこにあるのか。東洋経済オンラインの取材に答えた。
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