「記憶に残る映画音楽が減っている」

久石譲が抱く音楽への危機感

2006年にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で紹介され、大きな反響を集めた『奇跡のリンゴ』。実在のリンゴ農家・木村秋則氏の実話が映画化され、全国東宝系で公開中だ。

年に十数回も散布する農薬の影響で皮膚がかぶれ、何日も寝込んでしまう妻のために、無農薬でリンゴ栽培を行うことを決意した秋則。しかし、気の遠くなるような手間暇をかけて育てないと実らないというデリケートなリンゴ栽培において、無農薬を敢行するのは「神の領域」と言われるほどに、絶対不可能な栽培方法であった。何度も失敗を重ね、周囲からの猛反発を受け、さらには家族に極貧生活を強いてしまうほどに壮絶な日々が11年も続くが……。

この映画で音楽を務めるのは久石譲。ロケ現場で本作のモデルとなった木村氏に出会い、その明るい人柄に触れたという久石氏は、本作の作曲のコンセプトを「津軽のラテン人」に設定。マンドリンやウクレレなどを組み合わせて、感動的でありながらも、どこかユーモラスな味わいのする曲を生み出している。

そんな久石氏に映画音楽を作る際のこだわり、そして音楽業界の現状について聞いた。

ムードで映画音楽が作られている

――久石さんは子供の頃に映画をたくさん見られていたそうですが、映画を見たことが今の映画音楽を作ることに役立っていることはありますか?

あると思います。今まで、映画音楽はどうしたら書けるのかと悩んだことがありませんでした。小さいときから多くの映画を見てきたという蓄積があったおかげで、シーンに合わせて自然に音楽が生みだせるようになった気がします。

次ページ24分の1コマまで全部計算して音楽を作る
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