――もちろん監督と相談しながらだとは思いますが、久石さんが携わる映画に関しては久石さんが「ここに入れる」と、責任をもって決められているということですね。
それは当然のことです。当然のことですが、今はそうではない作品が多くなっている気がします。結果、ものすごく中途半端な感じの作品ばかりになっています。最近のハリウッドの映画の効果音がそういう状況で、この十数年間のハリウッドで、記憶に残る映画音楽がほとんどなくなってきています。それは、音楽に対して作曲家がコントロールできなくなったからです。確かに映像とは密接ですが、音楽作品としてのトータルの力がなくなっています。だから映画音楽はこれからどんどん衰退していくでしょう。それは基本的に憂うべき事態です。
でも、もうそういう流れは止められない。ハリウッド映画をしっかり見る人が減っているし、CDを聴く人間も映画を観る人間も減っています。ではみんな、何をやっているのだ?と思えてくる。何のために楽しみを得てるのかが、わからない状況。しかし、そこをちゃんと見極めないといけない時代に入っているのですが、答えは見つかりづらいですね。
「情報」になってしまったから音楽が売れなくなった
――映画ではフィルムがなくなるということが象徴的です。変化は必要だと思いますが、一方で昔ながらのよいものをそこまで変えなくていいのに、と思う面もあります。音楽業界でもそういうことが起こっているのでしょうか?
クリエイティブの現場でも、絶対残さなければならないというラインが、崩れてしまった。山田洋次監督は、フィルムがなくなることに対して本当に困っていらっしゃいます。映画を撮るのはフィルムにこだわっていても、フィルムで上映できる映画館がなくなってきていますからね。
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