「記憶に残る映画音楽が減っている」 久石譲が抱く音楽への危機感

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――もちろん監督と相談しながらだとは思いますが、久石さんが携わる映画に関しては久石さんが「ここに入れる」と、責任をもって決められているということですね。

久石譲(ひさいし・じょう)
国立音楽大学在学中よりミニマルミュージックに興味を持ち、現代音楽の作曲家として出発。映画音楽では宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』以降9作品を担当。そのほか、滝田洋二郎監督『おくりびと』、北野武監督『HANA-BI』、山田洋次監督『東京家族』など、国内外の映画音楽を多数手掛け、日本アカデミー賞最優秀音楽賞、紫綬褒章ほか各国で数々の賞を受賞している。

それは当然のことです。当然のことですが、今はそうではない作品が多くなっている気がします。結果、ものすごく中途半端な感じの作品ばかりになっています。最近のハリウッドの映画の効果音がそういう状況で、この十数年間のハリウッドで、記憶に残る映画音楽がほとんどなくなってきています。それは、音楽に対して作曲家がコントロールできなくなったからです。確かに映像とは密接ですが、音楽作品としてのトータルの力がなくなっています。だから映画音楽はこれからどんどん衰退していくでしょう。それは基本的に憂うべき事態です。

でも、もうそういう流れは止められない。ハリウッド映画をしっかり見る人が減っているし、CDを聴く人間も映画を観る人間も減っています。ではみんな、何をやっているのだ?と思えてくる。何のために楽しみを得てるのかが、わからない状況。しかし、そこをちゃんと見極めないといけない時代に入っているのですが、答えは見つかりづらいですね。

「情報」になってしまったから音楽が売れなくなった

――映画ではフィルムがなくなるということが象徴的です。変化は必要だと思いますが、一方で昔ながらのよいものをそこまで変えなくていいのに、と思う面もあります。音楽業界でもそういうことが起こっているのでしょうか?

クリエイティブの現場でも、絶対残さなければならないというラインが、崩れてしまった。山田洋次監督は、フィルムがなくなることに対して本当に困っていらっしゃいます。映画を撮るのはフィルムにこだわっていても、フィルムで上映できる映画館がなくなってきていますからね。

左から奇跡のりんごを作った木村さん阿部サダヲ、久石氏(C)2013「奇跡のリンゴ」製作委員会
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