「記憶に残る映画音楽が減っている」 久石譲が抱く音楽への危機感

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フィルムの深度だからこそ出てくる深みというのがあると思います。クリアであればOKというものでもないです。イマジネーションというか、見る側にイメージをかき立てさせるために、考えさせる余白が必要。フィルムのときは映像がボケていたから許されていたものが、クリアになるとそうではなくなります。クリアになることと、クリエイティブであることが、まだ一致できていないのです。

便利になるということと、そうじゃないことをちゃんと分けていかないと、非常に厳しいと思っています。音楽がなぜ売れなくなったかといえば、「情報」になってしまったからです。コンピュータで聞いても、メロディは覚えられるかもしれないけど、そこに感動なんてありません。すべて情報化してしまうからです。今、情報が大事なんて言うのは、とんでもない大ウソです。情報化するところにクリエイティブなんてないんですよ。

情報化するということは、怖いことなのです。みんなiPhoneでちょっと聴いて「こういう曲ね」とわかった気になっています。それはまずいしょう。メロディは覚えられても、そこで「ああ、いいな。涙がでるな」なんてものはありません。やはり自分の家でしっかり聴くなりして努力しないと、感動は得られないでしょう。

――アルバムを買う人も少なくなっています。ダウンロードだと曲順も関係なくなります。

サントラを出すたびに苦しい思いをしています。誰が買うのだろうかと、考えながら作っていますよ(笑)。

僕は、ちゃんとスタジオで録音して、マスタリングもちゃんとしています。曲順もしっかりと考えている。CDは、手をかけたら手をかけた分だけよくなっていきます。この『奇跡のリンゴ』の映画と一緒ですよ。こういうときだからこそ、逆に1個1個アナログの極みみたいに五感で仕上げていくことが大事になるんじゃないですかね。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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