シェール革命、「むしろ石油に脚光」 出光興産・月岡次期社長に聞く

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話題の小説「海賊とよばれた男」のモデルとなった、出光佐三が1911年に創業した出光興産。国内石油需要の構造的減退で元売り大手が合併統合を繰り返す中でも、「自主独立」路線を貫いてきた。近年は海外シフトを鮮明化している。

その出光で、前任の中野和久氏から、6月27日の株主総会後に社長職を受け継ぐ月岡隆氏は、同社きっての販売通と言われ、国際経験も豊富。月岡新社長に、海外事業をはじめとした成長戦略や国内の業界再編などについて聞いた。

海外への傾斜投資は、背景にエネルギー安保への貢献

――新社長として推進する2013~15年度の中期経営計画では、戦略投資3400億円のうち8割を海外へ振り向けます。

出光はこれまで基盤事業とする燃料油、基礎化学品の両事業で成長してきた。ただ、2000年代に入ると国内の石油需要が漸減。その中で当社は、日本のエネルギーセキュリティ(安全保障)へ貢献しながら、アジアの経済発展に貢献していくという「2つの貢献」を戦略としてきた。

アジアを中心とする海外への投資は、単にリターンを目的としたものではない。今、ベトナムのニソンで製油所・石油化学コンプレックスの建設を計画しているが、これはベトナム現地の石油会社であるペトロベトナムと、クウェートの国営石油会社であるKPI、日本の三井化学という3社とのプロジェクトだ。クウェートとは原油資源で長く取引をしており、これからもパートナーでありたいと考えている。また、カタールでも製油所立ち上げのお手伝いをしており、やはり同国との原油取引を今後も確固たるものにしていきたい。そうした(長期的関係を深める)意味合いを持った投資だとつねに思っている。

カナダでは現地のアルタガス社と組んで、シェールガスを含めた天然ガスの液化、対日輸出事業を行おうとしている。カナダは世界有数の資源国だが、米国内のシェールガス、シェールオイル増産でカナダ産への需要が減退するという事情もあり、無資源国である日本への供給で貢献したい。この計画も中計の戦略投資の中では大きなもののひとつだ。

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