株主総会議事録から見える、東電のホンネ 希薄な加害者意識、除染は「お客様対応」と無責任発言も
しかし、東電が「一部のライブ配信や、議事の経過の要領等の本支店での据え置き」で情報公開をよしとしていることには、問題があると考える。東電の普通株式の株主数は86万7703人に上る(3月31日現在)。だが、そのほとんどは株主総会に出席しておらず、そのやり取りの詳細を知ることができない。また、「議事の経過の要領」に記載された内容は、総会でのやり取りを克明に記載したものとは言えないからだ。
株主総会のなかの、「東電のホンネ」を抽出
こうしたことから、東洋経済オンラインでは、録音データを活字化したうえで、個人名を匿名扱いにするなどプライバシーに配慮したうえで、そのすべてを公開することを決めた。
このことは、株主利益のみならず、過酷な原発事故を引き起こした東電の経営を国民の立場からチェックするという意味で、公益にもかなうものでもあると考えたためだ。
ただ、株主総会でのやり取りに関する全文(【完全保存版】東電株主総会全議事録(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6))は、合計で8万字以上にのぼるため、すべてを読み通すことは骨が折れる。そこで、ここでは、以下、東電の「ホンネ」が現れているとみられる箇所など、注目すべき発言部分を複数拾い出し、解説を加えた。ぜひ、全文の該当箇所と照らし合わせて、読み進めていただきたい。
心に響かない謝罪の言葉、希薄な当事者意識
「議事に先立ちまして、株主の皆様そして立地地域、広く社会の皆様には、福島第一原子力発電所の事故により2年余りが経過した今なお、多大なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、役員一同、心より深くお詫び申し上げます」(下河邊和彦会長)(→議事録全文(1)の1ページ)。
「当社は事故の責任をまっとうするため、福島復興本社を中心に国や自治体と連携しながら、親身、親切な賠償を徹底し進化させるとともに」(廣瀬直己社長)(→同(1)の3ページ)。
「最初の質問はですね、福島第一における世間をお騒がせし、またご迷惑をおかけ、ご心配をいただいております漏洩水へのですね、現状における対応の問題でございます」(下河邊会長)(→同(4)の1ページ)
「汚染水の問題については、当初、大変な苦労をしながらですね、処理施設を作り、タンクを作りしてまいりましたが、なかなか手を打ちにくいというところがあったことは事実でございます」(小森明生常務執行役)(→同(4)の2ページ)
(東洋経済記者による解説)東電は被害を受けた住民への謝罪の言葉として、「ご迷惑とご心配」という文言を事あるごとに用いている。この言葉は、公民館などで大勢の住民を前にした場合のみならず、放射能汚染で農作物の出荷が不可能になったことを苦にして命を絶った農家の遺族への謝罪の言葉としても用いられたが、「謝罪に値しない」と遺族から強い反発を受けている。
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