「尾崎牛」のグローバル化が映す和牛の危機

価格高騰と飼育者減の間で悩む

和牛を作り出すのには12人のプロフェッショナルがかかわります。1.子牛を産ませる、2.獣医師、3.人工授精する人、4.削蹄(さくてい)師、5.トリミングする人、6.セリに出す市場関係者、7.牛を運ぶ運送業者、8.飼料を販売する会社、9.肥育農家、10.内臓を洗う人、11.枝肉のパーツに分ける人、12.骨を外す人。日本人の丁寧な感性とまじめさがないと難しいといわれ、和牛はいわば、精密機械だといわれています。和牛を育てるために必要な12人のプロフェッショナルの存在を考えると、尾崎牛としても海外に売り先を広げ、時代に応じた適正価値で取引拡大せざるをえないのが現状です。

ブランド価値が、意味を発揮してくるとき

ワインが日本に定着するときに、最初は「フランス」などの生産国程度の認識だったのが、「ボルドー」「ブルゴーニュ」などの産地になり、今では生産者まで深堀りされて愛飲されています。和牛も同様に、グローバルで拡大が続くと、いずれ「国」→「産地」→「肥育農家」まで特定して楽しまれる時代が来ると思います。その際に肥育農家でもある尾崎牛のブランド価値が、意味を発揮してきます。

価格高騰する肉牛を日本人に買えるのか?(写真:筆者撮影)

和牛のグローバル展開が急速化したときの問題は、価格高騰する肉牛を日本人に買えるのか?ということです。将来、和牛は一部の富裕層のためのものとなって中間層の手には届かなくなり、海外に流通されてしまったら、さらなる価格高騰が起きることが想定されます。

子牛の価格がさらに向上する際、売る場所を作らないといけません。そうなると近い将来、日本で現状のように、気軽に焼き肉が食べられなくなるかもしれません。日本の国家財産である和牛の世界のごちそう化がさらに進むでしょう。

戦後70年かけてトラクターや耕運機の出現により農耕用の役牛(えきぎゅう)の役目から解かれ全国に280万頭飼育されていた和牛が、今は160万頭にまで減少してしまいました。日本古来の和牛を海外の牛肉との競争力に打ち勝つために、「霜降り」の遺伝子を官民一体で固めたのが今の和牛です。日本人12人の手で作り上げる日本の国家財産「和牛」をこれ以上、減らすわけにはいきません。

尾崎牛のグローバル化戦略は、霜降り「BMS12」を目指して迷うことなく肥育を邁進し、和牛の適正価値を評価してくれる世界に価値を広げ、海外マーケットを拡大していくことを急務としていることです。現状の動きを見ていると近い将来、牛枝肉がさらに高騰し、日本で気軽に焼き肉が楽しめなくなると思えてなりません。

※補足 [B.M.S.]とは、ビーフ・マーブリング・スタンダードの略で「脂肪交雑」を評価するための12ランクの基準です。12ランク中、No.12が最高基準

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