森友学園問題で露呈した「行政の無謬性」の壁 安倍首相が会計検査院に調査を委ねたワケ

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3月2日の参議院予算委員会で、安倍首相は「会計検査院が審査すべき」と答弁。山本太郎議員(写真右下)の「アッキード事件」という言葉に首相が反発する一幕も(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

今通常国会は森友学園問題で持ちきりだ。そもそもの発端は、学校法人森友学園が大阪府豊中市にある約8770平方メートルの国有地を、鑑定価格9億5600万円のところ、1億3400万円で購入したことにある。地元の豊中市議会議員が2016年9月に情報公開請求したところ、この国有地の売却額を財務省近畿財務局は非公表としていた。今年の2月10日に、近畿財務局は一転して公表し、売却額が明らかになった。森友学園側が売却額を非公表とするよう財務省に依頼していたという。

鑑定価格から大幅に値引きされての売却となった理由や経緯をめぐり、国会の内外で問題にされている。政府の見解は、ゴミ撤去費として見積もった8億1900万円などを差し引いた、というものだ。

安倍晋三首相は国会答弁で、この売却額が妥当か否かについて、会計検査院の調査に委ねることを明言した。野党側が、政府の内部調査や与党による国政調査権に基づく調査を求めるも、安倍首相は会計検査院の調査に委ねるとの姿勢をかたくなに貫いている。3月2日の参議院予算委員会でも、「会計検査院がしっかり審査すべきだ。それに全面的に対応するのが政府としてできる最大限のことだ」と述べた。また、会計検査院の河戸光彦院長は、「一連の事実関係を確認したうえで多角的検査を実施する」と答弁している(2月23日の衆議院予算委員会)。

「葵の御紋」並みの権能を持つ会計検査院

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会計検査院の調査(厳密には検査)というと、一般の国民にはなじみが薄いが、財政においては日常茶飯事である。会計検査院は、国会や裁判所に属さず、内閣からも独立した機関である。国の収入支出の決算などを検査し、会計経理が適正に行われるように監督して、その是正を図ることが、会計検査院法第20条に規定されている。

つまり、不適切だったり不合理だったりする会計経理を見つけたときは、単にこれを指摘するだけではなく、原因を究明してその是正や改善を促すという積極的な機能を果たす権限が与えられている。また、2005年以降は、毎年度の決算検査報告の作成を待たず、随時、その検査の結果を国会や内閣に報告できることになった。

森友学園問題に限らず、国会で認められた予算が適切に執行されているかどうか、国有財産が適正な価格で売却されているかなどを検査する権限を会計検査院は持っており、各省庁に対して強く是正を求めることができる。

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