高度成長期の幻を売る「謎の屋台女子」の正体

リーマン直後に就職し、「純喫茶」に救われた

先生からは「昭和が好きなのはただの趣味ではないか」「過去がよかったとすることは後ろ向きな表現ではないか」と度々言われた。

そこで、なぜ、現代に高度成長期をテーマにすることが必要なのかということを考えた。

「高度経済成長期は大量生産の始まりの時代ですが、現代ほどの過剰な大量生産はなされていなかった。四季折々を楽しむ日本文化が工業化によって薄れてしまったが、高度成長期は工業化と日本の風土にあった生活が共存していた限定的な時代だったのではないかと考えました」

研究をしながら、2台目の屋台を作った。店名は「幻」。その屋台は物を売るのでも、酒を出すわけでもない。「幻を売るんです。高度成長期は、今となっては幻だから」。加えて、新宿ゴールデン街の小さなバーで、月に何度かママを務めるようになった。

大嫌いなハズの「ニュータウン」に移住

大学院を修了した菅沼さんに転機が訪れた。なんと、あれだけ忌み嫌っていたニュータウンに引っ越すというのだ。大学院修了前の作品発表会で、人生の再現ドラマとして屋台を制作するまでのストーリーを発表し、これからありうるかもしれない“続編”として「国際編」と「移住編」のポスターを作って展示した。その「移住編」のポスターを、郊外ニュータウン問題を研究している建築科の先生が見て、彼女をニュータウンに移住させようと考えたのだ。

ニュータウン嫌いの菅沼さんが、廃れゆくニュータウンの救世主となるか(撮影:今井康一)

移住先は、高齢化と人口減少で空き家が増えた埼玉県の某ニュータウン。一戸建てを安く借りることになった。都心からは遠いが、部屋が4つあるので作品制作に便利。屋台も家の中にしまえる。

「家のリビングはスナックにします。名前は、もちろん『幻』」

この「幻」では、幻を売るのではなく、さすがにちゃんと酒を出す。カラオケも導入する。人工的なニュータウンが生き返るきっかけになりそうだ。オープンは7月。オープン後の様子はまた本連載で報告したい。

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非正規労働者が年末年始の待遇や病気休暇などについて正社員との格差是正を訴え、最高裁は格差は不合理で違法とする判決を出しました。一方で賞与や退職金についての格差是正はほぼ全面的に退ける判決も。非正規労働者の待遇は改善するのでしょうか。

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