金融庁の狙いは「代理店がさまざまな保険の中で、ニーズに合うかどうかではなく、生保会社から受け取る手数料が高いものを優先する勧誘から、顧客を保護する」ことだそうですから、乗り合い代理店だけでは不十分だと思うのです。
1社専属の代理店も保険会社直属の営業担当者も、販売実績に応じた報酬を保険会社から受け取ることで生計を立てているかぎり、手数料が安い商品や成績計上における評価が低い商品を積極的に販売することは考えにくいからです。
実際、筆者が大手生保の営業だった当時には、手数料が高い新商品が発売されたあと、一定期間内に当該商品を販売することを強要されるようなこともありました。達成できなかった営業職員は、他の商品をどれだけ販売していても、(すでに受講済みの)新商品研修会に参加させられたことも生々しく思い出されます。
開示されてこなかった情報を消費者が収集するには
営業部門が高い収益を見込める商品の販売を求められるのは自然なことであり、今も昔も変わらないのではないでしょうか。これまで大半の保険会社の商品で代理店手数料などが開示されていないのは、保険会社の都合によるところが大きいのではないかと思います。
たとえば、投資信託では、販売手数料ゼロで運用期間中に発生するコストが0.1%強の商品もあるため、保険以外の金融商品に関する知見をもつ人たちには、保険の手数料率は驚くほど高いと認識されているからです。
保険会社が積極的に開示してこなかった情報を消費者が収集するには、各自が素朴な問いかけを繰り返すことが大切だと思います。その際、留意してほしい点が3つあります。
2 手数料率も大事だが、“額”にも注意
3 手数料も含む「契約に要するコスト」を問い続ける
まず、手数料の確認は不可欠です。手数料は加入者による負担が「確定」しているコストだからです。貯蓄性が語られる保険など、手数料が明らかになるだけで、「確実なマイナスリターン」を知ることができるのです。最優先で確認する必要があります。「手数料が不明なまま、契約はできません」という消費者が増えると、情報は開示されるでしょう。
ただし、商品の具体的な保障内容と保険料の比較も怠ってはいけません。「手数料が高い保険=加入者に還元されるおカネが少ない保険」という認識は、間違いではないものの、現実はそれほど単純ではないからです。
保険料には、手数料その他の保険会社の運営に必要なおカネが「見込み」で含まれていますが、死亡保険金や入院給付金の支払いに向けられるおカネも、人が死亡する確率などを基に見込みで反映されています。
そのため、保険金・給付金支払いに必要なおカネを高めに見込み、手数料を安くしている商品と、保険金等の支払いに要するおカネを経営の安定性を脅かさない範囲で抑えつつ手数料を高くしている商品がある場合、後者が「保険料が安く保障内容も優れている」こともあるのです。
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