朗報!保険の手数料開示が進むかもしれない 後押ししたい金融庁の動き

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比較が難しい複雑な商品については「真に顧客本位でありたい保険会社ならば、素人にも理解しやすい商品を提供するはずだ」と考え、検討を見送るといいでしょう。私が知るかぎり、保険以外の分野も含めて、複雑な仕組みの金融商品に優良品はないからです。

次に、手数料率とともに、手数料の額を気にしてほしいと思います。仮の数字ですが、月払い保険料3000円・初年度代理店手数料率が40%の「がん保険」と、月払い保険料3万円・初年度代理店手数料率20%の「終身保険」を想像してみましょう。

手数料は年間6万円くらい、後者のほうが高くなります。言うまでもなく、家計への影響が大きいのは、率ではなく額なのです。

現実的な対策としては、「養老保険」「終身保険」「変額保険」「個人年金保険」など、貯蓄性・資産性が語られる商品を避けることがいちばんです。老後資金準備などを意識すると保険料が高額になりやすいこともあり、おのずと持ち出しが増えてしまいます。

手数料はコストの一部にすぎない

3番目に、「手数料だけでなく保険会社の取り分なども加味して、契約にかかるコストを教えてください。加入者に死亡保険金や入院給付金として還元されるおカネの割合(還元率)はどれくらいなのですか」と営業担当者などに尋ねてほしいと思います。

手数料はコストの一部にすぎないからです。筆者は、手数料も含むトータルのコストは3%程度、つまり「還元率97%」も可能だと考えています。多くの保険会社より規模が小さい埼玉県民共済が実現しているからです。

同共済の2015年度の決算資料によると、「医療・生命共済」と「生命共済」の正味掛け金収入395億5400万円に対し、入院給付金等の支払いは204億7800万円です。これに資産運用益等を含めた剰余金から加入者へ払い戻しをした176億8900万円を加えると、掛け金収入の約97%が加入者に還元されていることがわかります。

埼玉県民共済の専用ATMに1万円入金すると手数料が300円かかるイメージです。この程度のコストで運営されるのであれば、保険や共済は加入者同士が支え合う「相互扶助」の仕組みである、といった説明にもなじむと思います。

埼玉県民共済の掛け金収入は400億円弱ですが、年間保険料収入が1000億円単位の保険会社は珍しくありません。1兆円を超える会社も少なくないのです。経営面でのスケールメリットを考えると、新聞報道にあったような手数料率が通用しているのは不可解だと感じます。

投資信託では、近年、コスト削減競争が進み、利用しやすい商品が増えています。投信ブロガーなどと呼ばれる一般の人が、ブログ等でコストを重視した情報発信を繰り返してきた影響も見逃せないと思います。

金融庁の動きは、保険業界に対する良い意味での「外圧」のように感じられます。読者の皆さまにも、この流れを後押ししてほしいと思います。価格競争による恩恵を最も享受できるのは、ほかならぬ消費者なのです。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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