竹中平蔵「アベノミクスは100%正しい」 安倍政権の経済政策を占う
――次のアジェンダの柱となるのはどの政策でしょうか。
基本的に、改革の大玉、いわゆる、岩盤規制と呼ばれるものがあります。その中から、何をやっていくかです。それを突き崩す装置として、特区はうまく使ってほしい。特区で実績を上げて岩盤規制を壊していくのが、ひとつのやり方です。
数え方によりますが、岩盤規制の数は5〜10程度です。だから、年間2つずつ岩盤規制を壊すという目標を決めてやっていけばいい。2つであれば、360度敵に回すことはないので現実的です。3〜5年の長期政権を築いて、毎年2つくらいやっていけば、ほとんどの問題は片付くことになります。
たとえば、農業に対する株式会社の本格的参入や混合診療の導入などを実現するひとつの方法として、そういうやり方があると思います。
本当に必要なのは総理の思い入れ
――改革のセンターピンは何によって決まりますか?
これも総理の意志です。なぜ郵政民営化がセンターピンになったかというと、小泉元総理が強い思い入れを持っていたからです。当時、「郵政民営化はそんなに重要か」と思った人もたくさんいましたが、「小泉さんがそこまで言うならやろう」ということになったわけです。だから、本当に必要なのは総理の思い入れだと思いますね。
安倍首相は、憲法改正に思い入れがありますし、それは重要なテーマです。ただし、当面は経済政策に力を入れて強い基盤を作ってから、憲法改正に取り組んでほしいと思います。
今のところ安倍首相は「この秋は成長戦略実現国家だ」と言い切っていますし、ポリティカルキャピタルを引き続き改革に使う方向です。そこには本当に期待したいと思います。
――産業競争力会議の政策への影響力はどの程度あるのでしょうか?
会議で決まったことは閣議決定されますから、決定されたことに関しては決定的な影響力があります。ただ問題は、まだ改革の大玉がないことです。
楽天の三木谷さんは産業競争力の評価を100点満点で75点と評価していますが、いい線をいっていると思います。なぜ100点から遠いかというと、法人税減税といった大玉が入っていないからです。しかし、今までのような、通り一遍の40~50点の成長戦略よりは画期的です。戦略特区も入っているし、コンセッション(インフラ運営権の売却)も入っています。100点と50点の中間として、75点というのは的確な評価です。
これからのポイントは、どうやって残された課題を解決していくか、そして、どんな形で改革実現をフォローアップしていくのか。産業競争力会議に続く後継組織のあり方は、まだ発表されていません。