竹中平蔵、アベノミクスを語る 竹中平蔵・慶応義塾教授に聞く
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円安株高に支えられ、好スタートを切った安倍政権。政府の産業競争力会議の議員を務める慶応義塾大学の竹中平蔵教授に、アベノミクスについて尋ねた。
──安倍内閣は幸運ともいえるスタートを切りました。
いやいや、違うと思いますよ。これは安倍晋三首相が見事に期待の変化を作り上げたのだと思う。それを幸運だと言う人がいるが、それは本質を見誤っている。
これは故・速水(優)元日本銀行総裁に教わったのだが、鴨長明の『方丈記』の中に、景気とは「空気の景色」という説明が出てくるそうだ。まさしく、景気は「気」から。経済学的にはエクスペクテーション(期待)だ。それが今高まっている。それを高めたのは安倍首相の功績だ。
──アベノミクスをどう評価していますか?
3本の矢の考え方は極めて正しい。問題は、それをどこまで実行できるかに尽きる。次の日銀総裁に黒田東彦(はるひこ)・アジア開発銀行総裁を充て、1本目の矢は放たれた。2本目の矢も、短期的な財政拡大を一応果たした。
ただ、2013年度の基礎的財政収支(税収と国債費を除く歳出の差)の赤字は国内総生産(GDP)比で6.9%に達する。政府の目標どおり、20年度までにこの赤字をゼロにするなら、単純計算でも今後7年間、毎年1%ずつ改善していく必要がある。歳出削減であれ、増税であれ、それだけの負荷を毎年かけるのは大変なこと。中長期の財政再建シナリオがまだ見えていないし、シナリオをいつ示すのかもわからない。
3本目の矢に至ってはまだ形が見えていない。過去7年間に、成長戦略は七つ作られた。今回は日本経済の景色を変えるという、本当の意味での画期的な成長戦略を作れないと、8年目に8本目の成長戦略ができました、で終わってしまう。今夏の参議院選前までにどこまで示せるか、それがまさに問われている。