竹中平蔵、アベノミクスを語る 竹中平蔵・慶応義塾教授に聞く
──財政赤字を減らすには増税か歳出削減しか選択肢はなく、いずれにしても国民の痛みを伴います。
増税しても問題は解決しない。歳出をこのまま放っておくと、社会保障費が毎年1兆円ずつ増えていく。まず必要なのは歳出の抑制だ。(消費税率を10%に引き上げる)増税プランは、今ある赤字を補うためのもの。これでは消費税を30%にしても足りないし、国民は納得しがたい。
日本の社会保障は年金と医療、介護に非常に偏っており、若い世代の社会保障は圧倒的に劣っている。つまり、税と社会保障の一体改革ではなく、労働市場と教育と社会保障の一体改革を進めるべき。女性が働きやすくするために、労働市場の仕組みも変えていく必要がある。
今の年金制度は、問題はあるけれども、ひととおりのことはやっている。ところが、若い世代への社会保障は、日本は欧州の3分の1から4分の1にすぎない。ここにおカネを使うための増税なら、私は賛成だ。経済を強くする、サプライサイドを強くするような社会保障改革。今の改革にはその視点が欠けている。
──金融政策について伺います。黒田新総裁になっても、日銀の打てる手は限定的ではないですか?
それを考えるのが金融政策の専門家としての中央銀行だ。中身の政策手段は、独立した中央銀行としてやってもらいたいということに尽きる。ただ、私は、政策というのはつねにオーソドックスであるべきだと思っている。つまり、マーケットから国債を買い、マネーを増やして、その効果を見ながら(マネーを)コントロールしていく。まずは当たり前のことをやってみるということだろう。
──日銀副総裁に就任する岩田規久男氏は今後2年で2%のインフレを実現できると言っています。実現可能ですか?
可能でしょうね。ある程度の時間差はあるでしょうが、可能です。しっかりとした金融政策を行い、人々の期待を変えていけば実現できる。
──マネーを増やしさえすれば、本当に物価が上がるのでしょうか。
まあ、見ていればいいではないか。同じような批判は過去にもあった。不良債権処理はみんなに不可能だと言われたが、実現した。経済は中期的にはセオリーどおりに動く。もちろんタイムラグはあるけれども。
(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年3月23日号)
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