竹中平蔵「アベノミクスは100%正しい」 安倍政権の経済政策を占う

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2つ目は、日本で遊んでいるおカネの運用。つまりは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。この年金運用機関には、110兆円の資産があります。シンガポールやノルウェーは同じような性格の資金を30兆円運用していますが、30兆円の運用をするのに1000人のプロフェッショナルが携わっています。一方の日本は、110兆円を71人で運用しています。つまりは、運用していないも同然で、国債を無条件に買っているわけです。そこにぜひ風穴を開けたい。

今回の成長戦略には、公的な資金のあり方、運用の仕方について根本的に議論する委員会をつくると記されています。第12回目の産業競争力会議の席では、安倍首相自身がGPIFに言及しました。これはすごいことです。

経済界が改革を邪魔している

最後に、もうひとつ残されたテーマが、移民です。移民というと、一般の方々は直感的な反発を持ちますが、オーストラリアやアメリカの例を見ても、成長戦略を議論するときには必ず最初に移民が出てきます。これは当たり前の話です。

日本は2050年までに、3200万人の人口がなくなります。3200万人というとカナダの人口です。この国から、カナダの人口がいなくなるわけです。2030年を超えると毎年100万人がいなくなります。100万人というと、私の出身の和歌山県の人口です。ひとつの県が毎年なくなっていきます。ちゃんとした労働力を加えていかないと、それだけの人口減少には耐えられません。

私が教え子の女性に「何が欲しいか」ときくと、まず「メイド」と答えます。メイドがいれば、女性が仕事に専念できますし、女性の職業参加率も高まるはずです。移民の問題は今回突破できませんでしたが、どこかで向き合う必要があります。今すぐ移民を入れようという話ではないですが、少なくとも議論は始めないといけません。

――最近は、若い人たちの間で、起業ブームが起きています。変化の主体として若い人にも期待が持てそうです。

そうだと思います。その際に重要なのは、日本は開業率も低いけれど、廃業率も低いということです。なぜ廃業率が低いかというと、成績の悪い企業や能力のない社長が居座っているからです。それを追い出すシステムがありません。

これは、英語で言うとメタボリズム、新陳代謝ですよ。英語で、We should increase metabolism というと、「太ったほうがいい」という意味だと思う人も多いですが、これは「新陳代謝を高めよ」という意味です。それをやるために、やっぱりコーポレートガバナンスが大事です。

ところが日本の企業は、独立した社外取締役をほとんど置きません。欧米はどこの国でも、取締役会の過半数は社外取締役とするよう何らかの形で義務づけています。しかし日本では、それを法律で義務づけようと提案したとたんに、経済界が反対しました。だから私は、改革を邪魔しているのは経済界だと思いますよ。

(撮影:尾形文繁)

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