「カード持ってるか? 忘れた人は? いない? みんな持ってるね」
「カード」とは「高2縄跳び練習カード」のことである。B4サイズの厚紙の両面に、「規定種目」「単独技」「自由演技」の3項目それぞれのリストが印刷されている。
「総得点」の欄の下には「評価基準:総得点および難易度の高い規定もしくは高得点の自由演技を総合的に判断する」とある。3学期の6~7回の授業で、できるだけ多く得点することを目標にしている。
整列はしていなくても、なんとなくみんなの目と耳は先生のほうを向いており、まったく私語がないわけではないが、先生の言葉が聞こえる程度には静かだから先生もいちいち注意はしない。一斉に準備運動をするという集団統制的な雰囲気もほとんどない。そんなアバウトさがいかにも桐朋らしい。
「じゃあ、各自準備体操をしてから練習を始めてください」と神本教諭が言っても、案の定、準備運動らしい準備運動をする生徒は少数派。ほとんどの生徒がすぐに縄を跳び始める。中には友達と2人組で、「お嬢さん、お入んなさい」を始める生徒もいる。繰り返すが、桐朋は男子校である。
縄跳びも変わっている
みんな、変わった縄跳びを持っている。持ち手の部分は竹を切っただけのもの。それにビニール製の縄を結ぶ。竹とビニールの縄は学校の購買部で販売されている。竹の太さは一本一本違う。ビニール製の縄は4色から選び、自分の跳びやすい長さに切って使う。つまり縄の一つひとつがカスタマイズ製品だ。持ち手をビニールテープで巻いている生徒も多い。滑り止めと補強の2つの意味がある。
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