何事も2国間の交渉で解決しようとする米国のトランプ新政権は、国際連合(国連)にも矛先を向けている。2016年末、国連安全保障理事会がイスラエルによる占領地での入植活動を停止させようとした際、トランプ氏は「米国が拒否権を行使して国連決議を阻止すべきだ」と主張していた。イスラエルはときとして、国際社会の意向を無視してでも強引に入植を進めることがある。ただ今回、米政府は従来のようにイスラエルを支持せず棄権にとどめたので、決議は成立した。
が、トランプ氏はこれに不満で得意のツイッターでも、「国連は集まって話して、楽しむだけのクラブだ。とても悲しい」と批判した。そして「国連についての物事は1月20日(の大統領就任)以降に変わる」ともツイッターでつぶやいた。
新政権はこのつぶやきどおり、国連について新しい方針の検討を始め、国連への拠出金の削減や、一部の多国間条約からの離脱を考慮している、と言われている(1月25日付ニューヨーク・タイムズ紙)。
7カ国入国禁止には事務総長も批判
トランプ新大統領が就任早々、中東・アフリカ7カ国からの入国禁止と難民の受け入れ制限を行ったことについて、米国の内外では批判が沸き起こった。国連でも、グテレス事務総長は1月31日の声明で、「難民を宗教、人種、国籍で差別することは、国際社会の基本原則、価値観に反する」と批判した。
翌2月1日の記者会見でもグテレス氏は、「テロを防ぐ効果的な方法ではない。速やかに撤回すべきだ。もし国際的なテロ組織が米国のような国を攻撃するなら、紛争地の旅券を持たせて入国させたりせず、先進国の旅券を持つ人を使うだろう」と、大統領令を非難して再考を促した。
そのグテレス氏は、1月1日に国連新事務総長に就任、20日に米大統領に就任したトランプ氏と事を構える結果になったわけだが、米国が難民受け入れを拒否し続ければ、難民対策を重視する国連との対立は不可避だろう。その後、入国禁止措置は停止されたが、最終的な決着は、本稿起草の時点でついていない。難民の受け入れ拒否は大統領令のままである。
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