イスラエルでは、トランプ氏が一方的にイスラエルびいきの姿勢を見せたためだろうが、同国のネタニヤフ首相が国連決議を無視するどころか、挑戦的な姿勢を見せた。1月31日にはヨルダン川西岸の占領地で新たにユダヤ人入植者向けの住宅3000戸を建設する計画を承認した。
これはトランプ政権にとっても、さすがに行き過ぎと映ったのか。ホワイトハウスのスパイサー大統領報道官は2月2日、「新たな住宅建設や入植地の拡大は和平にとって有益ではない」と、イスラエルに批判的な内容の声明を発表した。複雑な中東問題においては、米国としてもイスラエルにブレーキをかける必要もあることを示す、初めての出来事だと思う。
トランプ大統領とネタニヤフ首相との会談は今月15日に予定されており、表向き両首脳は米・イスラエル関係の強化で盛り上がるだろうが、実際にはどのような話し合いになるか。中東に対して、イスラエルとアラブ双方にバランスのとれた姿勢で臨むことは、米国にとっても必要なはずだ。そのことを無視して、トランプ氏がイスラエルびいきを続ければ、結局、多くのアラブ諸国を敵に回すことになる。
22%という分担金の比率が重い
新政権が検討している、国連の拠出金削減や国際機関からの脱退についても、これまで複雑な経緯があった。米国が国連に対して不満を募らせるのはトランプ政権が初めてではない。そもそも国連は第二次世界大戦を終えるに際し、戦後秩序の中核として連合国が設立した機構であり、米国は最初から主導的役割を果たしていた。しかし、国連はその後、冷戦の影響でマヒ状態に陥ることが多く、また、新興国が数を頼みに米欧に対抗する場となることもあり、その結果、国連のあり方について米国は不満を募らせた。さらに、日本、ドイツ、イタリアなどかつての敵国の国際的地位が上昇、国連への加盟も果たしたものの、安保理のメンバーにはなれないなど、新しい問題も出てきている。
米国は国連改革に熱心に取り組み、経費削減、人事システムや会計検査などについても、具体的な提案を行ってきた。だが、国連は多数の国から人が集まっている巨大な組織であり、米国内での機構改革のようなわけにはいかないのが現実だ。そのため米国は、議会からの圧力もあったが、分担金の支払いを遅らせるようになった。2012年時点での滞納額は約7.4億ドルに上っていた。
国連予算における米国の分担率は、2017年で22%になっている。金額では約6.1億ドルだ。ちなみに日本はその次で9.68%である。米国の分担率はもともと25%だったが、いかに米国とはいえ、1国だけにそのような巨額の負担を強いるべきでないと交渉が行われ、22%になったのだが、トランプ新政権はこれでも多すぎるという考えなのだろう。
米国の負担が軽減されると、反対に各国の負担は増加する。米国が持てる影響力をフルに使い、たとえば支払い停止などの強硬手段で要求の実現を求めるようになると、国連は深刻な危機に陥る。
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