暴走トランプが無視する「国連」の権威と秩序 国連と米国のはざまで日本は立ち位置に悩む

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さらに米国として究極の手段は、国連から脱退することだ。さすがにこれは常識的にありえないと思われているが、実は米議会には過去十数年間で毎年、脱退法案が提出されている。いつも廃案になっているが、今後支持者が増えないとは言い切れない。新政権が検討している、一部の多国間条約からの離脱は、国連を対象としていないように聞こえるが、実際にどのような提案が出てくるか、不気味な感じはぬぐえない。

米国と国連の対立が先鋭化すると、日本の立ち位置は難しくなる。日本は国連と対立するわけにはいかないからである。

常任理事国に入れない日本も不満

国連のあり方に問題があると感じている点で日本は米国以上だ。特に安保理事会の常任理事国になれないのは大問題で、国連のマネジメントについても問題があるとの認識をもつ。国連予算に対する日本の分担率は、前述したとおり、米国に次ぐ第2位。金額の大きいことを振りかざすのは賢明でないが、当然それなりの発言権はあってしかるべきだろう。

もっとも、日本は、国連から離脱するわけにいかない。日本の戦後の政治秩序は憲法をはじめ、戦争で敗れたという事実のうえに成立しており、日本の安保は国連の集団安全保障によって確保するというのが、国防の基本方針だ。これは今でも生きている閣議決定である。米国との安保条約に依拠するのは、集団安全保障が機能するに至るまでとされている。このほかの分野でも、国連は重要であり、日本外交の主要舞台である。

トランプ政権としても、国連を離脱すれば、大きなダメージをこうむることは避けがたい。米国以外の国にも害が及び、米国の影響力を排除したい国に、批判の口実を与えることになる。だから、歴代の政権は強い不満を抱きつつも、今日まで国連の一員として各国と協調してきた。が、トランプ氏の行動は著しく不透明で、従来の常識では測りえない面がある。日本としては、これまで以上に米国と国連の関係に注意を払い、今後も米国が国連で積極的役割を果たすよう、働きかけることが必要だ。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

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みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

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