話は2013年2月にさかのぼる。もともと「はま寿司」はサイドメニューにB-1グランプリで賞を獲った「鳥モツ煮」や「せんべい汁」を提供するなど、さまざまなメニューをトライし、顧客の反応を見てきていた。
特にそばは「はま寿司」しか出していなかったメニューでたいへん人気があり、麺類の可能性はつねに探っている状態だった。
ラーメンを提供しているお店はいくつかあったが、全国チェーンでやっているところはまだそれほど多くなかったということもあり、トライしてみようということになった。
まずは、回転寿司チェーンとして海鮮系のラーメンを出すべきという意見が多く集まった。なおかつ、絵柄のインパクトも必要ということで、漬けマグロを乗せた「まぐろラーメン」や「かにラーメン」など見た目にもわかりやすいラーメンを開発した。
結果、海鮮系のラーメンは失敗に終わった。「おすしを食べにきているのに、ラーメンにまで海鮮を求めない」というのが来店客の反応だった。
ラーメン業界のトレンドを押さえる
それでも「はま寿司」はあきらめなかった。ラーメンの可能性はまだまだ絶対にあると考え、まずは都心の人気のラーメン店に片っ端から足を運び、ラーメン業界のトレンドを把握した。
その動きの中で、テーマが決まった。
「都心で行列を作っているラーメンを全国チェーンで提供する」。行列店はそこに行って並ばないと食べられないが、全国にお店を持っているという手広さを生かして展開すればきっとお客さんは来てくれる、という考えだ。
とはいえ、行列店が手間暇かけて作っているラーメンをどう再現するか。チェーンなので、素材や製法も行列店そのままというわけにはいかない。素材やスープ、それぞれの「パーツ」を組み合わせて答えを見つけていく作業が始まる。はま寿司・商品部の三熊淳太郎氏は語る。
「日本はダシ文化で、ダシに対する味覚がたいへん優れています。これまでもみそ汁やダシしょうゆの開発など、ダシには特に力を入れてきました。ラーメンのスープとなると可能性は無限大。一日中スープを飲んでいる日もありました」
「はま寿司」は、お寿司用のしょうゆを5種類用意している。ネタに合わせて好みのしょうゆを選べるシステム。ここも日本のダシ文化に合わせたものだ。
ラーメン単品の味がおいしければいいわけではなく、お寿司に合うものにしなくてはならない。お寿司のすし酢の中には塩と砂糖が多く含まれる。さらにそこにしょうゆをつけて食べるので、ある意味、舌が麻痺した状態になる。その中で、お寿司に味負けしない味を追求した。うま味やダシ感を強めにし、インパクトを出す工夫をした。
こうしてラーメンの研究が進んでいった。
そして第1号に選ばれたのが、当時流行していた「魚介濃厚とんこつラーメン」だ。これが大ヒット。これまでの3倍以上の売り上げを記録する。
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