人工甘味料を「危険」と決めつけるのは問題だ 「ノンカロリーだから安心」とも言えないが…
こうした背景もあり、いわゆる人工甘味料は、食品添加物の中でも最も嫌われるものの一つです。たとえば現在、最もよく用いられる甘味料のひとつであるアスパルテームは、その認可に際して非常な議論を巻き起こしました。さまざまな厳しい試験の末に認可され、世界で広く用いられている現在でも、その安全性を疑う声は根強く残っています。
近年登場して、人工甘味料の主流の座を占めているスクラロースやアセスルファムKなどについても、毒性を疑う記事をよく目にします。読者のみなさんにも、どこか気持ちの悪い思いを抱きながら、これらを含んだノンカロリードリンクを口にしている方も多いのではないでしょうか。中には、人工甘味料が入ったものは、いっさい摂取しないと決めている方もおられるかもしれません。
科学雑誌「Nature」が発表した論文には?
さて、そうした状況で、また気になる話が流れてきました。世界最高の権威を誇る科学雑誌「Nature」に、人工甘味料が糖尿病のリスクを増加させるという趣旨の論文が発表されたのです。糖分を摂り過ぎると糖尿病になるというから人工甘味料を摂っていたというのに、それがまた糖尿病を引き起こすとはどういうことか――と、裏切られたような気持ちになった方も多いのではないでしょうか。
この論文によると、人工甘味料のひとつであるサッカリンをマウスに与えると、11週間後に耐糖能に障害が起きることがわかりました。耐糖能とは、糖分を摂取して上昇した血糖値を元に戻す能力のことで、これが異常に低くなると糖尿病となります。つまり甘味料サッカリンは、糖ではないのに糖尿病の引き金になりうる、というのがこの論文の主張です。
もうひとつの実験で、無菌状態で育てたマウスに、サッカリンで耐糖能異常を起こしたマウスの糞便を移植すると、耐糖能異常が感染することがわかりました。ここから示唆されることは、サッカリンが腸内細菌のバランスに何らかの影響を与え、糖尿病の引き金を引いているのではないかということです。
このマウスでの実験結果は、ヒトにも当てはまるのか? 現在イスラエルで400人近くを対象に行われている臨床研究では、人工甘味料の摂取量が多い人に、肥満や糖代謝異常の傾向がある人が多かったということです。そこで、この論文の著者らが7人に高用量のサッカリンを6日間与えたところ、4人が耐糖能異常の兆しを示したといいます。確かに、これだけ見れば気になる結果には違いありません。
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