楽天だけでなく、証券アナリストにもモノ申す グローバルエリートが証券アナリストの実態を論評

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意外と適当な株価バリュエーション手法

さて、“バリュエーションモデル”と聞くと、高度な数学を駆使したロケットサイエンスの世界だと思い込んでいる業界外の方も多いのだが、公開株のアナリストレポートに載っている株価予測モデルのバリュエーション手法は驚くほど単純なものが多い。

実際、複雑な金融工学を駆使したバリュエーション理論がたくさんの学者の皆様によって開発され、議論されているが、たとえばマッキンゼーが出しているバリュエーションの本も確かによくできているのだが、実務ではほぼ使われない空論だったりする。これは複雑すぎてモデルをつくるのに時間がかかりすぎることと、お客さんも理解しないが、モデルを作っている本人も理解できないからだ。

理論的に正しくても、買う人がその理論を実践しなければ株価は別の要因で決定されるわけである。実際の話、それが金融理論上正しいかどうかは別として、公開株の世界では驚くほどPER(株価収益率)に依存しており、ほかに使われてもせいぜいPBR(純資産倍率)とROE(なおこの2つを使えばPERも計算できることに留意)、EV/EBITDA(簡易買収倍率)が大半である。なお、これに配当利回りやフリーキャッシュフローレシオも銘柄と状況によっては使われる。たまにPEGなどというよくわからないコンセプトを発明する人もいるが、詳細は(需要があった時のみ)また今後に譲ることにする。

もろもろの予測事項や資本コストの変化を織り込むにはDCF(ディスカウントキャッシュフロー)を使う必要があるが、そもそも予測項目に入れる不確かな前提が多すぎることと、割引率を少し変えれば理論株価が極端に振れる不安定性から、ターゲット株価算定に使われることはあまりない。

この点、マーケット経験のない学者やコンサルタントが膨大なモデルと細かい予測項目を入れて、毎年の資本構成の変化に応じて割引率を変えたり、アンレバードβなどを計算したりして正確な割引率の算定に執念を燃やすのは、“賢い人”にはかなわないな、と思いつつも、(別にそれらは実際株価に全然影響を与えていないことも多いので)若干、ほほ笑ましくもある。

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