さて、私はいまさらにしてルーブル美術館に来ているわけだが、本日も美術品を鑑賞しながら頭の中は楽天問題でいっぱいで、ハンムラビ法典は見忘れるわ、ミロのヴィーナスは見忘れるわ、さんざんであった。
前回の記事に対しては、読者の皆様からさまざまな反響をいただいたのだが、楽天の批判に同調する意見と、「アナリストもいいいかげんなレポートを出すな」というものが混在していた。私は別に楽天だけを批判したかったわけではなく、三木谷氏はすごい経営者だと思っているのだが、今回はバランスをとるべく証券業界のアナリストの問題点について一席ぶたせていただこう。
本コラムは楽天問題で取りざたされた三菱UFJモルガンスタンレーの荒木正人シニアアナリストを指すわけでもなく、また私が大手バイサイド運用会社で働いていたときに私をカバーしてくれたもろもろの投資銀行のアナリストの皆さんを指すわけではない。あくまで一般論ということで、例外もたくさんあるということを踏まえつつ、参考にしていただければ幸いである。
多くのアナリストが、会社発表のオウム返し
まず証券アナリストで腹立たしい事例ナンバーワンが、レポートを読むと会社側が会社説明会で言っていることを言葉を変えて書いているだけのもの、ないしは会社取材すればIRや社長が教えてくれることをほぼそのまま書いてあるものが多いということだ。彼らのレポートは決算短信や会社説明会資料に書いてあることの要約みたいなものにすぎず、それをいかにも自分の分析であるかのように書きつづる人も散見される。
仮に9人くらい同じ会社をカバーしていたら、4~5人くらいはほぼ同じような内容のレポートなわけだが、機関投資家にとってありがたいのは会社の業績予測の主要前提が直近の現実とどれだけ懸け離れているかの情報や、会社に聴いただけではわからない、サプライヤーや顧客、同業者のバリューチェーンを分析して投資対象義者のマネジメントが気づいていない真実を教えてくれることなのだが、こういう付加価値を出してくれるアナリストは少ない。
なお中には、あえて会社の行っていることに反対ばかりしているアナリストもいる。これは会社のオウム返しのアナリストが多い中で簡単に差別化できるやり方だ。機関投資家もこのコントラリアン(逆張りの人)から新たな視点を取り入れようとするため、そういうアナリストにはけっこう需要が高まるのだが、「反対のために反対をする」という日本の野党みたいになっているアナリストも多く、会社側との関係も悪化することが多い。
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