高学歴女子が年収212万でもNPOで働く理由 「どうせならやりたいことをやって死にたい」
年収750万円と212万円の仕事、選べるならどっちを選ぶ?というシンプルな問いから、私の“N女の研究”は始まった。
「N女」とは、NPOや社会的企業などのソーシャルセクターで働く女性たちの総称だ。中でも高い学歴や職歴を持ち、有名企業に就職する実力がありながら、あえてソーシャルセクターを勤め先に選んだN女たちに今回は焦点を当てたい。その理由は、30代半ばに入ったころから、自分の周りにそういう選択をする人が増えてきたからである。
高スペック女子たちが次々NPOに転職
慶応大学を卒業後、大手人材派遣会社を経て、雑誌販売によってホームレス支援を行う会社「ビッグイシュー日本」へ転職した女性。ICUを卒業後、大手飲料メーカーに勤務し、さらに海外の大学院と一橋大学大学院での修士課程を経て、NPO法人「難民支援協会」に就職した女性……。
そうした女性たちが身近な存在になりつつあった3年前、今度は突然、親友の1人が転職を決めた。かつては大手ソフトウェア会社のアメリカ本社に勤め、外資系IT企業を渡り歩いてきたキャリアウーマンの親友が突然「東北の復興支援をやっている非営利団体に転職する」と言い出したのだ。給料を半分以下に減らしての転職である。
就職トレンドに何か重大な変化が起きているのではないか?そんな疑問を抱いていた頃、偶然耳にしたのがこの「N女」という言葉だった。ハイスペックな女性たちの中に、ソーシャルセクターを就職先に選ぶ人たちが出現し始めている、というのである。
取材を進めていくにつれて、N女という存在自体は新しいものではなく、昔からあったことがわかってきた。かつて市民運動などで活動していた女性たちの中にも、社会問題への関心が高い高学歴女性たちがいたのだ。
ただし、旧世代と新世代のN女とでは、決定的な違いが1つあった。それは、活動が「仕事」であるかどうかだ。大学卒業後は専業主婦となることが一般的だった旧世代のN女たちにとって、活動とはボランティアによる無償奉仕だった。それに対し、働くことを前提として社会に出てきた“新世代N女”たちは、活動先の団体をあくまでも「就職先」として捉えていたのである。
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