高学歴女子が年収212万でもNPOで働く理由 「どうせならやりたいことをやって死にたい」

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もう一つ、N女たちの転職理由としてよく挙げられたのが、前職で得たノウハウを生かしてNPOを稼げる団体にしたい、という強い思いである。

リクルートでの営業職を経て、NPO法人「クロスフィールズ」に転職した三ツ井稔恵さんは、リクルート時代に、ある支援団体でプロボノ(スキルを生かしたボランティア)を経験したことから、団体の資金繰りの難しさを痛感した。そこで、その後転職したNPOでは、非営利団体だからという甘えの意識を捨て、成果を出して取引き先に認めてもらう必要性を説いている。

また、NPO法人「NPOサポートセンター」の杉原志保さんは、市役所や財団など、助成金を出す側の組織での勤務を経て現職にたどり着いているが、背景には、NPOが抱える資金難があったと話してくれた。「NPOが自力をつけて事業計画を考え、民間からお金を集めるシステムを作り上げていかない限り、結局のところ団体の運営基盤を強化することにはつながらない」という。

NPO業界の抱える資金不足をどうにかしたい

N女たちには、自分のノウハウや経験を生かして社会課題を解決したいという思いがあると同時に、業界が抱えてきた慢性的な資金不足という問題をどうにかしたいと思っている。

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なぜなら、これまでのNPOにありがちだった「いいことをやっているから補助金をください」という姿勢では、安定的に活動できないことを彼女たちは知っているからである。

社会課題はたくさんあるが、かつてほど財源がない日本。N女たちの出現は、ある種の必然であり、必要なことである一方で、業界の給与水準が彼女たちの高い能力にまだまだ見合っていない点など、問題も多い。N女たちが今後どのような道を切り開いていくのか、あるいはN女の出現が単なる一過性の現象で終わってしまうのかは、正直なところ私には分からない。

ただ、取材を通じて感じた「N女現象」を一言で表すなら、それは彼女たちが示した「嘆かない」という姿勢だったように思う。冷静で、ロジカルで、前向きで、柔軟だった彼女たち。「嘆いている暇があるなら、さっさと行動して嘆かずに済む方法を探します」。そう言わんばかりの彼女たちの清々しい行動力は、この時代を生き抜く全ての人にとって、大きなヒントとなるのではないだろうか。

中村 安希 ノンフィクション作家

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なかむら あき / Aki Nakamura

1979年京都府生まれ、三重県育ち。カリフォルニア大学アーバイン校芸術学部演劇科卒。09年、47カ国を巡る旅をもとに書いた『インパラの朝』で開高健ノンフィクション賞を受賞。他の著書に、『Beフラット』『食べる。』『愛と憎しみの豚』『リオとタケル』がある。

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