揺れる「穏健なドイツ」、テロ事件の巨大衝撃 極右派の台頭も懸念される事態に
トラックという、武器らしくない武器によるテロが発生する可能性について、11月、米国務省が欧州に向かう観光客に対し警告を発していた。クリスマスの時期にテロリストたちが「休暇中の祭りや催し、戸外のマーケット」で「通常及び通常ではない武器」を使って攻撃をすることがあるため、注意を喚起した。ベルリンの場合も、ニースの場合も「通常ではない武器」とはトラックだった。
ドイツでは今年、イスラム国がその関与を認めた2件のテロ事件が発生している。7月には27歳のシリア人男性が自爆テロを起こし、斧を持ったアフガン人の男性が電車内で斧を振り回し、4人に傷害を加えた。
ドイツ政治の転換期になるか?
英ニュース週刊誌「エコノミスト」はベルリン・テロ事件がドイツの政治を過激なポピュリズムに追いやるのではないか、と懸念する(「ベルリンのクリスマス・マーケット事件はドイツの神経をテストする」、12月24日号)。
事件は、メルケル政権の難民「歓迎文化」の下にドイツにやってきた難民の中にジハド戦士がいるのではないか、という恐怖心が高まりつつある中で発生した。
難民の受け入れに反対する極右政党「ドイツのための選択肢=AfD」の欧州議会議員は、テロで12人の犠牲者が出たことに言及し、「メルケル(が引き起こした)死だ」とツイートしている。
2005年から政権を担当してきたメルケル首相は、移民・難民を大量に受け入れたことで内外から批判を浴びた。
メルケル氏が党首を務めるキリスト教民主同盟の支持率は下落していたが、党内右派勢力から支持を得るためにイスラム教徒の女性がかぶる「ブルカ」(全身を覆う衣装)の着用禁止に傾く様子をみせたり、偽の難民申請者に厳しくあたる姿勢を出すなど、次第に党内の支持を強める状態にあった。
しかし、今回のテロ事件が難民によるものと判明した場合、メルケル政権に逆風が吹く。
「ベルリン市民は過剰反応をしないだろう」という見方ものあるものの、もし今回の事件がフランスのように次々とジハド戦士が生まれる流れを作るようだと、「ドイツの政治にとって、転換期となるかもしれない」とエコノミストは報じている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら