揺れる「穏健なドイツ」、テロ事件の巨大衝撃 極右派の台頭も懸念される事態に

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現在までにイスラム過激組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を発表しているが、はたして直接指令を受けた犯行なのか、イスラム国の思想に心酔した人物の独自行動なのか、またはイスラム国がこの機に便乗して関与を発表しただけなのかは不明だ。

英メディアは、ベルリンのトラック事件をISとの関連で分析するとともに、積極的な難民受け入れ政策をとったメルケル政権への負の影響を懸念する。

「ISの戦略が変わった」とガーディアン紙

ガーディアン(20日付)は、トラックを使ったテロ事件が「ISの戦略の変更を意味する」と指摘する。 

ベルリンのテロ事件は、今年7月14日のフランス革命記念日に南仏ニースで発生したトラックの突っ込み事件を思い出させる。ニース事件は、チュニジア生まれでフランス居住権を持つ男性が運転するトラックが花火鑑賞を楽しんでいた市民に向かってぶつかっていった事件だ。86人が亡くなり、数百人が傷を負った。

犯行に使われたトラック。これはISにとっては武器なのだ(写真:REUTERS/Hannibal Hanschke)

ドイツではクリスマス・マーケットでの買い物、フランスでは フランス革命記念日の花火鑑賞はそれぞれの国民が重要視する年間行事だ。こうした特別の日が格好の標的になったという面も似ている。ガーディアンの指摘によると、イラクで勢力を失い、シリアでは軍事圧力をかけられて苦しんでいるイスラム国は、乗り物を使って攻撃を行い、西側諸国でジハド戦士をリクルートする必要にかられていたという。

イスラム国の雑誌「ルミヤー」11月号には「敵方の戦線」で戦う具体例としてニース事件が使われていた。表紙にはトラックの写真が掲載されていた。

11月25日には、フランス当局がパリのクリスマス・マーケットなどでのテロを計画していたと思われる5人を逮捕したばかりだ。隠していた武器が逮捕につながった。こうした「弱点」を克服するためにそれ自体はテロとは関係がない「トラックの利用につながった」とガーディアンは指摘する。

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