「検索エンジンへの最適化は犯罪ではない。検索エンジン対策は今や当たり前の対策だ。しかし、過度にやり過ぎるとモラルに反するうえ、(メディア事業の)競争性という面でも公平性が損なわれる。検索エンジン対策は”お金で買える”側面があるため、大企業あるいはリクルートやサイバーエージェントなど多様な事業を展開している企業が有利になるからだ」(杉本社長)
検索エンジン対策に投資する余剰資金が多いほど、メディアとして生き残る確率が高くなる事業環境が進んで行く。そんな世界が当たり前になっていけば、コンテンツの劣化は進み、メディア産業全体の価値が下がってしまう。
そうした中でグライダーアソシエイツが取り組んでいるのが、個々の記事や筆者に対してスポンサードするシステムの構築だ。たとえば音楽の場合、CD販売からネット配信へと移行する中で、アルバムが売れず個々の曲だけが売れるようになり、結果としてアーティストの収入が減少した。
今後は文章を中心としたコンテンツも同様の変化が起き、雑誌やポータルサイトといった大きな枠組みでの広告出稿は減るのではと杉本氏は予想する。そこで、書き手あるいはフォトグラファー、音楽家、イラストレーターなど、個人まで掘り下げて広告主がスポンサー先を決められるようにすることで、KPI偏重からコンテンツの質に対して広告投資を行えるようマッチングの仕組みを整えることでキュレーションの仕組みを正常化。キュレーションビジネスの持続的な成長を促すのが目的だ。
出版業界がネット事業に本格参入する
「出版事業は今後5年で本格的に厳しくなり、大手も財務が悪化するだろう。裏を返せばデジタル化が遅れている出版業界(昨今のキュレーションメディアの多くはネットを中心とした広告代理店やネットサービス事業者が多い)が、いよいよ本格的にネット事業へと軸足を移す可能性がある。ネット対応が遅れていたジャンルだけに、移行が始まった場合にはそのスピードは速い」(杉本社長)
それゆえ、今後、アンテナのようなキュレーションプラットフォームに、出版社をパートナーとして巻き込みやすくなるというのが杉本社長の見立てだ(もちろん、東洋経済オンラインがGQ JAPANなどと進めているように、出版系メディア同士がお互いの記事をキュレーションしあい、自サイトの読者に有益な情報を提供していく、という道もある)。
DeNAパレットと類似するキュレーションサイトの多くは、その源流にインターネット広告を得意とする広告代理店や、利用者を直接消費行動へと結びつけるライフスタイル情報サイトの運営者などが多い。サイトへの訪問者数や訪問回数、あるいは広告クライアントへの送客数といった”数字”を整えることには長けているが、コンテンツ制作に対する意識は低い。
しかし、出版社をはじめ、多くのコンテンツを保有し、またコンテンツ制作ノウハウに長けた業界がネット事業に本腰を入れ始めれば、ネットコンテンツの質が向上することも期待できる。そのときにこそ、情報・コンテンツと人を結びつけるキュレーションプラットフォームの役割が今よりも大きなものとして見直されるのかもしれない。
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