営業部を殺す「現場が人を育てる」という妄信 それはマネジャーの責任放棄でしかない

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難しい案件を部下が拾ってきたらまさにチャンス。どうしても部下のため取りたい。どうするか。同行して受注まで持ち込む。こうやってクロージングするのだと教える。部下育成に関心があったらそうなる。無関心だと、週に1回の営業会議で「何だこの成績は、あと2割何を持ってくるのか」と、結果論を言うだけになる。プロセスが大事なのだ。

──「自分自身を売り込め」も妄信なのですか。

1000回ぐらい営業に行って1回ぐらいは気に入られたから、という場合もあるかもしれない。そんな確率の低いことをことさら取り上げるのは大げさすぎる。売り込むのは商品やサービス。自分を売り込んでばかりいると、商品知識、営業ノウハウ・サービスをまじめに覚えない。このまやかしはそうとう罪が深い。

──営業マニュアルも大事と。

営業マニュアル作りはとても大切だ。マネジャーによっては口下手な人がいるから、会社のノウハウを均一に教えられないし、継承できない。会社は歴史を重ねるほど、営業部隊もノウハウがたまる。最低限、会社として持つべきノウハウは文章に残さないといけない。これはナレッジマネジメントの基本だ。形式知はイコールマニュアル化といってもいい。

マニュアルを体得していない人に営業はお願いできない

藤本篤志(ふじもと あつし)/1961年生まれ。大阪市立大学法学部卒業。USEN取締役、スタッフサービス・ホールディングス取締役を歴任。2005年グランド・デザインズを設立し、営業コンサルティング、営業人材紹介を開始。主な著書に『御社の営業がダメな理由』『社畜のすすめ』『どん底営業部が常勝軍団になるまで』など。(撮影:梅谷秀司)

──画一的になってしまうといわれませんか。

それは真っ赤なウソ。人はいくらマニュアルがあっても、それにプラスして個性が絶対出る。逆にマニュアルがないとアドリブができない。音楽でもアドリブやソロを任される人は元の楽譜を完璧に弾ける人だ。マニュアルを体得していない人に営業はお願いできない。

──ストーリー仕立てがいいとも。

箇条書きにして覚えられる人はよほど頭がいい。物語風にしたほうが覚える。マニュアルを作る目的は、そのエッセンスを全営業マンが頭の中に詰め込むことだから、なるべくそうできる方法を選ぶことだ。

──営業には性格の向き不向きがあるのですか。

なまじ自分は「明るくて社交性がある」から営業向きだと思うと、知識をきちんと身に付けようとしなくなる。スポーツで才能やセンスがあるのに、努力しなくて結局潰れていくケースと一緒だ。センスがないなと思えた人でも、黙々と練習してスターになった人は少なくないし、これは営業にもいえる。

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