「ハイブリッド型」腕時計が急成長できる理由 フォッシルは試金石となれるか

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ディスプレー型スマートウォッチには、ソニーやカシオといった日本メーカーも参入しているが、ハイブリッド型では目立った動きはない。確かにハイブリッド型はまだ小さな市場だ。しかし、ハイブリッド型での市場における経験は将来、時計メーカーの勢力図を大きく変える要因になるかもしれない。

フォッシルは、時計の見本市「バーゼルフェア」で3月に披露したハイブリッド型スマートウォッチを9月20日、発表した。同社は他社ブランド供給品を含め、本数ベースでは世界トップ2に、金額ベースでも3位に入ると言われる量産メーカーだが、ウエアラブル機器ベンチャーのMisfitを買収。スマートウォッチの「Fossil Q」シリーズに、新提案の製品として追加したものだ。

Fossil Qシリーズはディスプレー型スマートウォッチ(Android Wear)、ハイブリッド型スマートウォッチ、活動量計の3カテゴリーが用意されている。フォッシルは世界170カ国以上で多様なブランドの時計を販売する米国企業だ。

日本では自社所有、他社ライセンスを合わせ7ブランド(FOSSIL、Misfit、SKAGEN、DIESEL、EMPORIO ARMANI、kate spade new york、MICHAEL KORS)のスマートウォッチ、活動量計を展開。全107モデルにものぼる。

これらは、フォッシルが長年培ってきたマルチブランド展開による多様な時計デザインと、それらを流通・販売させるノウハウを生かして開発・販売されており、時計専業メーカーならではの商品ラインナップだ。スマートウォッチをきっかけに時計市場に参入したアップルやソニー、サムスン、LGや前述のWithingsが、メーカーごとに共通性の高いデザイン言語に統一しているのとは異なり、コンシューマーとの接点をファッションブランドを起点として多様なデザインテイストの製品を展開するのがフォッシルの戦略だ。

活動量計ベンチャーのMisfitを買収

アナログ指針式クォーツウォッチの機能に加えて、従来のMisfit製活動量計が備えていた機能をすべて内蔵する

時計業界では内部のメカニカルコンポーネントを「ムーブメント」と呼び、同じムーブメントから多様な製品が作られている。こうした従来の事業の中で自然に身に付けたビジネスメソッドを、電機メーカーが多いスマートウォッチの世界に持ち込むのがフォッシルの戦略だ。

そして、その核となっているのが2015年に年買収したMisfitの技術である。

Misfitは元アップルCEOでもあるジョン・スカリー氏が創業時から参加していたことで知られるベンチャー。活動量計を中心としたウエアラブル市場が勃興した時期に、長期間ボタン型電池で使用できる省電力性とシンプルな機能、それに自動的に睡眠モードへと移行する精度の高さ、ファッション性や防水性の高さなどから注目されたブランドだ。とりわけ北米と中国での人気が高かった。

なぜ世界でも指折りの時計メーカーであるフォッシルがMisfitを買収したかに関しては、同社幹部にインタビューした記事(フォッシルが狙う「Apple Watch後」の市場)に譲るが、要約するならば高級機械式時計市場が拡大する中、スマートウォッチの登場によって緩やかな縮小傾向が予想される普及価格帯のファッションウォッチ市場において新しい選択肢を与えるためだ。

フォッシルは省電力性やシンプルながらも機能性をウリにしていたMisfitを買収することで、緩やかな市場縮小に適応する道を選ぶのではなく、次世代における立ち位置を確保しようとしたのだ。

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