デジタル役員なくして、企業に勝利なし 有力ヘッドハンターが明かす、米国生まれの新潮流

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ラッセル・レイノルズ・アソシエイツのタック・リカーズ氏(左)とリース・グロスマン氏(右)。真ん中の人物は日本法人の安田結子氏(撮影場所は東京都港区のラッセル・レイノルズ・アソシエイツ・ジャパン)

日本ではまったく耳慣れないが、「CDO=チーフ・デジタル・オフィサー」と呼ばれる企業経営にかかわる新しい概念が米国で生まれ、日本を含む世界に広がろうとしている。

CDOとは、「企業の総合的なデジタル戦略を統括して、組織を横断する変革を推進する」取締役・執行役員レベルの役職だ。企業の財務部門を束ねるCFO(チーフ・フィナンシャル・オフィサー)や、技術や研究開発の責任者であるCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)などと同様に、企業経営において一定の部門・分野に責任を持ち、執行に当たる役職のひとつである。

CIO=最高情報責任者とは違う役割

一方で、デジタル戦略というキーワードから、企業の情報化を推進する責任者であるCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)が思い浮かぶかもしれないが、CDOの役割は従来のCIOとは異なる。

欧米を中心に世界で経営幹部層を対象にした人材コンサルティングを展開するラッセル・レイノルズ・アソシエイツでは、実際に米国や欧州企業などの依頼を受け、CDO候補となる人材をヘッドハンティングしている。同社で調査やコンサル、ヘッドハンティングなどの業務に当たっている、マネージングディレクターのタック・リカーズ氏とリース・グロスマン氏に、東洋経済オンラインはインタビューの機会を得た。

ラッセル・レイノルズによれば、米国のウォルマート、ウォルト・ディズニー、アメリカン・エキスプレスなどの十数社で、CDOに当たる役職が設けられている。小売り企業やエンターテインメント(娯楽)、金融サービスなど、消費者とじかに接する機会の多い企業が中心だ。欧州企業でも導入事例がある。

ラッセル・レイノルズにCDO人材を探す企業の依頼件数は、この2年で3割増え、それらの人材に払う報酬レベルも急騰しているという。日本企業ではCDOはまだ登場していないが、ラッセル・レイノルズへCDOに関連した情報交換などで接触を図っている企業が、複数あるようだ。

CDOとは何者か。なぜ、登場してきたのか。そして、どんな役割を果たすのか――。リカーズ氏とグロスマン氏へのインタビューとともに、補足・解説なども加えながら解き明かしていこう。

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