デジタル役員なくして、企業に勝利なし 有力ヘッドハンターが明かす、米国生まれの新潮流
グロスマン 出版などのメディア企業では顧客にアナログで提供している商品、サービスそのものをデジタルに変化させなければならなくなっています。それ以外の企業では商品やサービス自体は変わらなくても、顧客との関係を変えていくために、それぞれデジタルの要素を総合的に組み込まなければならなくなっています。
昔は企業側で独自にマーケティングして、商品を開発してお店に並べておけば、消費者が購入を決めていましたが、今はソーシャルメディアを通じて、消費者と直接つながり、商品開発に顧客の意見や要望、アイデアを採り入れることもできる。
音楽をビジネスにしている企業などの場合は、これまでCDを物理的に作ってお店で販売し、伝統的な手法でマーケティング活動をしていましたが、デジタルな要素によって顧客と直接の接点を持ち、マーケティングや販売の仕組みを変えるといったようなことが、想定されます。ブランドは守るものでしたが、オープンにすることも求められています。
――CDOに求められる能力やキャリアとは?
グロスマン たとえば、もともとはソフトウエアのエンジニア出身で、デジタルなプロダクト(製品やサービス)を作り、それをジェネラルマネジャー(日本企業でいえば部長級以上の役職)レベルで、実際にマネジメントした人が多い。もしくは、デジタルテクノロジーやデータ分析などの専門家出身。大事なのはモバイル、ソーシャルメディア、ビッグデータ、インターネットなどに詳しい人材でなければなりませんが、それを企業全体に広げていくので、リーダーシップも求められます。
ディズニーは伝統的なメディア企業でしたが、FacebookのCOOのシェリル・サンドバーグ氏を2010年から取締役に迎え入れました。これはラッセル・レイノルズがリクルートした事例です。CDOの候補になりえる人材は、相対的に見てIT系企業に多いですが、非IT系の一般企業、特に大手でデジタルソリューションを経験した人材がいれば、その人は価値が高い。
IT企業の人材は“引く手あまた”か
――IT・ネット系企業にいてCDOに足りうる人材が、一般的な消費財メーカーや小売り企業、メディア、エンタメ、金融サービス系の企業に移っていくこともありえるということですか。
グロスマン そうですね。実際に、IT・ネット系企業の人材が欲しいので探してほしいという依頼が、ラッセル・レイノルズには来ています。業界の境がこれからあいまいになっていくのかもしれません。
(撮影:尾形 文繁)
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