デジタル役員なくして、企業に勝利なし 有力ヘッドハンターが明かす、米国生まれの新潮流
――CDOとはどんな存在なのでしょうか。
タック・リカーズ 企業戦略や企業活動をデジタルの要素に関連づけて、どう適応させていくかを考えて実行していく人材です。われわれは、こういった活動を(企業経営で大幅な改革を行う「トランスフォーメーション」をもじって)「デジタルトランスフォーメーション」と呼び、CDO人材の調査、コンサル、ヘッドハンティングについては組織的に対応しています。
リース・グロスマン CDOが主に担うのは、企業の中に散在しているデジタルな活動を一元化していくことです。企業の製品やサービスの開発にもかかわり、デジタルなサービスや顧客との接触機会を作り上げていく。そのCDOを求める需要が、いわゆるIT・ネット系企業にかかわらず、消費財を扱うメーカーや小売業、医療、金融機関など、これまでデジタルな活動に特に取り組んでいなかった企業で生まれてきています。
それも、これまでは米国シリコンバレーやニューヨーク、英国ロンドンといった地域に限定されていましたが、日本をはじめとするアジアにも広がる気配を見せており、世界的な動きとなりつつあります。
テクノロジーの進化が背景
――CDOはいわゆるCIOとは違うのですか。
グロスマン 私たちの考えでは違います。通常のCIOは社内向けの情報システムを担当しているケースが多く、顧客との関係構築など対外的な活動にあまりかかわっていないからです。
――なぜ、CDOが求められるようになってきたのでしょう?
グロスマン (研究開発やマーケティング、生産、物流、販促、販売など)企業のさまざまな活動をデジタルで一気通貫していくことを可能にするテクノロジーが、どんどん登場してきているからです。「モバイル」「ソーシャルメディア」「クラウドコンピューティング」「ビッグデータ」の4つが大きなポイントです。
これらのテクノロジーをビジネスに取り込んで、企業活動をいかに変革していくか、ソーシャルメディアやビッグデータの活用などによって、顧客により近づけるか、などといったことが求められてきていることが、CDO登場の背景にあります。企業の考え方、いわゆるマインドセットそのものも変えます。