今回のサンクト・ペテルブルク会合で唯一、日本人パネリストとして奮闘していたのが前田匡史・日本政策投資銀行執行役員であった。第2次安倍晋三政権になってからわが国がロシアとの間で始めた極東地域に対する共同投資スキームについて、流暢な英語で説明していたのが非常に印象的であった。だが、悲しいかなそのプレゼンテーションがカヴァーしていた範囲は余りにも狭く、およそ並み居る「経済論陣」を揺さぶるようなインパクトは、残念ながらいっさいなかったのである。いずれにせよ、この会合における「経済論陣」による議論の様子とそれに対する私の考えは、私の報告書の中で明らかにしていく。
安倍首相、正しい日本バブルの作り方をご教示します
最後にこの場を借りて安倍晋三総理大臣に提案したい。―――国務に忙しい我が国の総理大臣がわざわざロンドン・シティまで行って「日本に投資して下さい」などと頭を下げる必要はないのだ。むしろ必要なのは、米欧のビジネス・スクールに留学し、海の向こうでキャリアを積んだものの、我が国に帰ってきても居場所がないような中堅・壮年層のマーケットの“猛者”やエコノミストたちを100名ほど、国費で雇いあげるのである。そして世界中で開催されているこれら国際経済会議に対して派遣し、「日本バブル」には未来があると「自然」な形で、同じメッセージを発し続けるのである。
しょせんは金融マーケットとの関係で素人集団である在外公館(大使館・総領事館)に東京からの訓令を棒読みさせたり、あるいは御老体の大学教授たちに高い旅費を払って型どおりの演説をさせるよりもはるかに効果があるはずだ。そしてそうした中堅・壮年層の「ジャパン・エコノミスト・チーム」の中から国を挙げてスターを創り出し、そのブログを世界中が読むように仕向けていくのである。これ以上に効果的なやり方はないことが、やり始めればすぐさまわかるはずだ。
サンクト・ペテルブルクで開かれた今回の会合で知り合ったフランス人は、「中国は今、自分たちが危機的だからこそ一生懸命説明しているのだろう。その必要がなければあそこまで一生懸命にはならないよ」と笑って言っていた。だが、同じくらい追い込まれているわが国が、それでは何もしなくてよいということにはまったくならないのだ。「日本バブル」を斬新な発想で支える、抜本的な取り組みが、今、求められている。
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