しかし、である。よくよく考えてみると、これは大きなワナなのである。6月18、19日に開催された公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備制度理事会(FRB)は、これまで行ってきた量的緩和(QE)を今年後半には縮小し始める可能性があることはっきりと打ち出し始めた。ここで世界マーケットが激変の時を迎えるのは、火を見るよりも明らかなのである。
中国は追いこまれている
これまでアメリカが大量のマネー(米ドル)を刷り出し、それを次々にホットマネーとして吸収してきたのが中国であった。いってみれば血液を送り出す「心臓」がアメリカだったのであり、中国はどうひっくり返ってもその血液があってはじめて動くことのできる「手足」であったにすぎないのである。そのアメリカが「心臓」であることを止めようというのであるから、「手足」の中国がどうなるのかは想像に難くないのである。下手をするとその経済は「壊死」してしまう。
本当はこのことこそが大問題なのである。だが、そうしたことはおくびにも出さず、今回のサンクト・ペテルブルクにおける会合で中国から送られた「専門家」たちは、「中国経済は苦しいが、しかし普通の手立てで何とかなる」と繰り返し述べていたというわけなのである。しかもこれをほぼ同じ論調を世界中で繰り返し、繰り返し刷り込んでいるのであるから、おのずと「経済論陣」たちも動かされざるをえない。
だが米欧から派遣されるこれら「経済論陣」の側にも立場がないわけではない。たとえば冒頭に紹介した「アベノミクス」に関する議論を行ったセッションでは、ドイツから派遣された有名エコノミストが出席していた。あまり知られていない事実であるが、年金基金を中心にドイツ系金融機関は、わが国の不動産とその証券化された商品をこの「アベノミクス」が始まる前から大量に買い占め始めているとささやかれている。
つまり「アベノミクス」から始まる我が国における資産バブル(「日本バブル」)の到来をあらかじめ察知していたというわけなのだが、そうであるからこそ、あまりこうした国際会議の場で「アベノミクス」批判をされてしまっては困るのである。だからこそこのドイツ人エコノミストは日本人のパネリストが誰一人としていないその議場で「いや、そこまで言わずとも日本は何とかするのではないでしょうか、今の『アベノミクス』の後にも」と静かに反論し始めたのである。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら